世界から軽蔑されても、愛してる。46歳で急逝した芥川賞作家・中上健次の最後の長編「軽蔑」が高良健吾、鈴木杏主演で映画化。『ヴァイブレータ』『余命1カ月の花嫁』など、男女の恋のリアルを描き続ける廣木隆一監督がメガホンをとる。地方の資産家の放蕩息子・カズと歌舞伎町のポールダンサー・真知子の恋。小さな幸せを求めてカズの故郷で暮らし始める2人だが、周囲は2人の愛を理解しようとしなかった。心ない言葉や噂が真知子を傷つけ、カズをギャンブルに陥れていく。愛してるなら、言葉で、体で、魂で伝えたい。打算的だけど不毛な愛と、破滅的だけど純愛。あなたが求めているのは? 男女のエネルギーが爆発する切ない愛の物語。
高良さんと鈴木さんが2人並んで話していているのを見ると、まるでカズと真知子が映画の中から飛び出してきたようだ。『軽蔑』は、大胆なラブシーンも含め、“演技人”であることへの2人の貪欲さが伝わってくる作品。まずは出演を決めた理由を聞いた。
高良:廣木監督に、「健吾でひとつ、作品考えているんだよ」って言われてはいたんです。廣木さんは『M』という映画で、自分のお芝居の軸を最初に作ってくれた方です。誘ってもらえるなら、どんな役でもやりたい・・・と思っていました。
鈴木:私も監督の映画が好きで、特に『ヴァイブレータ』とか、あそこまで生っぽい人間の姿を切り取れる監督はあまりいないし、健吾くんもすごく好きな俳優さんだから、オファーをいただいた瞬間に「ぜひ!」と思ったんですが、肌を見せなきゃいけないということも含めて、いろいろハードルがあって、まずちゃんと原作を読もうと。そうしたら、話自体のエネルギーにもしびれたし、真知子という女性に「憧れ」にも似た感情で惚れこんでしまって、真知子のありのままで生きる、ああいう強さがほしいなあ、って。だからあとは真知子になりたい、近づきたいという気持ちだけでした。
原作からすでに強烈なパワーを発するカズと真知子のキャラクター。演じるにあたってはどう考えたのだろう。
高良:原作があるということは“骨”は決まっているので、そこにどれだけ“自分が”演じる意味を考えられるかっていうのはありますね。オリジナルだったら自分で1から作れるじゃないですか。でも今回は、そういうことを考えずに、高良健吾っていう人がカズになりきろうって段階で、それでいいんだと思いました。
鈴木:原作ファンもいらっしゃるし、私も真知子のファンなので、プレッシャーも不安も恐怖もありました。映画と原作はまったく同じものになるわけはないけれど、でも私はこの脚本を読んだときに素敵だと思ったし、これは廣木監督の『軽蔑』。とても愛すべき作品になってるんじゃないかなって。自分が出ている作品を観て、そういう風に思うのも珍しいんですけど。だからこそ皆さんにも愛してもらえたらな、と思っています。
金とギャンブル、女に弱い金持ちのダメ息子とダンサーの恋は、周囲からなかなか理解されない。それでも、2人は愛し合うことを選ぶ。
高良:自分だけじゃなく、誰かがいるから、いい部分もたくさんある。特に男にとって女性はそういう存在で、男友達と女友達、というだけでもやっぱり女の子といるときは男って違いますよ。
高良:真知子にいくら「私がいたらダメになる」って言われても、カズからすれば、理屈なんてなくて、いやいや、だって「好きなんだから」ってことしかない。普通は先のことを考えたり、あそこまで反対されまくったら心が折れそうになると思うんだけど。そこはすごいと思う。
鈴木:やっぱりみんな孤独を感じてるんだと思うんですよね。真知子は少し面倒くさいんだけど、全身全霊でカズさんを好きになる。実はそれって意外と忘れられている感情で、大切だなって思いますね。
最後に余談。垂直に伸びるポールを使って官能的に踊るポールダンスは、最近エクササイズとしても女性に人気。それだけに、鈴木さんのセクシーなダンスシーンは女性が観ても興味津々!
鈴木:大変でしたよ〜。体のあちこちが痛くなりますし(笑)。自分を解放できるまですごく時間がかかる踊りなんですよね。でも、すごくおもしろくて、2カ月しか練習する時間がなくて、もっとやりたかったです。
高良健吾 PROFILE
1987年、熊本県出身。『ハリヨの夏』で映画初出演。翌年『M』で、第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門特別賞受賞。現在『軽蔑』が公開中で、NHK連続テレビ小説「おひさま」(NHK総合ほか)、サントリー「金麦」CMにも出演中。今後は、『キツツキと雨(仮)』(2012年公開予定)に出演する。http://www.kengo-fc.com/
鈴木杏 PROFILE
1987年、東京都出身。子役からスタートし、1996年、ドラマ「金田一少年の事件簿」でドラマデビュー。岩井俊二監督『花とアリス』、森田芳光監督『椿三十郎』、蜷川幸雄演出の舞台「ハムレット」「奇跡の人」など、話題作に多数出演
その日暮らしをしているカズは、借金を帳消しにしてもらうため、歌舞伎町のポールダンスバーを襲う。その店では、カズが想いを寄せるダンサー、真知子が踊っている。店をめちゃめちゃにし、客や従業員が逃げ惑う中、カズは真知子の手を取って外に飛び出した。「俺と高飛びしようよ」「高飛びって、どこ行くの?」「どこがいい?」。真知子もまた、いつも店に来てくれるカズが好きだった。そして2人はカズの故郷へ向かうが・・・。
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© 2011「軽蔑」製作委員会
取材・文/安田佑子 撮影/三佐和隆士
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