プーシキン美術館展 モネ 草上の昼食
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モネの初来日作はピクニック!?東京都美術館で「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」

更新日:2018/03/05

珠玉のフランス絵画コレクションで知られる、モスクワのプーシキン美術館。その中で、17世紀から20世紀にかけての風景画65点を集めた展覧会「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」が、2018年4月14日(土)から7月8日(日)まで東京都美術館で開催される。この作品は今回初来日となるモネの《草上の昼食》で、同時代の人々と自然の風景がみごとに調和した作品となっている。絵画で、美しい風景を巡る旅を楽しんで。

クロード・モネ 《草上の昼食》 1866年 (C) The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

プーシキン美術館展 エウロペの掠奪
クロード・ロラン 《エウロペの掠奪》 1655年

神話や物語の背景として始まったフランス絵画の中の風景画

今回の展覧会では、絵画の描かれた時代と場所を軸にしながら、フランスの近代風景画の流れを紹介する。第1部は「風景画」の成り立ちとその展開について。

風景は、神話や聖書の物語の背景として描かれてきた歴史が長く、「風景画」が成立したのは17世紀のオランダと言われている。やがてフランスの画家たちも自然に目を向け始め、物語を描いた絵の中でも風景の割合がだんだん大きくなっていった。こちらの《エウロペの掠奪》は、17世紀の画家クロード・ロランの作品で、ギリシア神話の神であるゼウスが王女エウロペに一目ぼれをして、白い牡牛に姿を変えて連れ去ろうとする様子を描いたもの。神話の世界が描かれてはいるけれど、美しい自然が広がる様子は“風景”が主役のよう。

こうした作品が増える中で、しだいに物語のシーンを描かない純粋な風景画が誕生してゆく。古来から山水画などで風景を描いてきた東洋の文化とは、まったく違うのがおもしろい。

プーシキン美術館展 .ギュスターヴ・クールベ/山の小屋
ギュスターヴ・クールベ 《山の小屋》1874年頃

19世紀には風景画が人気に。自然の美を求めて移り住む画家たちも

19世紀に入ると「風景画」の世界はさらに豊かに花開き、特に身近な自然を描いたバルビゾン派と呼ばれる画家たちの風景画が人気に。バルビゾン派というのは、パリ郊外のフォンテーヌブローの森に近い小さな村・バルビゾンに移り住んだ風景画家のグループのこと。このグループには、コローやミレーをはじめとする100人以上の画家がいて、自然主義的な風景画や農民の姿を描いた。

この作品はギュスターヴ・クールベの《山の小屋》で、アルプス山脈を背景にした素朴な山小屋の姿が美しい。雄大な自然と共に、煙突の煙や洗濯物などで、人の営みによる温もりも感じられる。パリを離れてスイスに住んだクールベは、バルビゾン派との交流もあり、フォンテーヌブローの森も描いているそう。

プーシキン美術館展 アルベール・マルケ/パリのサン=ミシェル橋
アルベール・マルケ 《パリのサン=ミシェル橋》 1908年頃

大改造で生まれ変わったパリの風景を描く印象派の画家たち

第2部は、風景の描かれた「場所」に注目して、大都市パリを基点にした展示を行う。

19世紀の半ばから、パリでは街並みが大きく変わるような「パリ大改造」を実施。光を捉えようとする印象派の画家たちは、近代都市として生まれ変わったパリの街を歩いて、風景画を残している。例えばアルベール・マルケの《パリのサン=ミシェル橋》は、穏やかな明るい色彩とシンプルな描線で、詩情豊かなパリの街角を表現した1枚。

この時期は、セーヌ川沿いの町やパリの西側に広がるブーローニュの森など、身近な自然を描いた作品も多い。印象派の画家たちが戸外制作をするようになったのは、19世紀半ばに開発された絵具チューブや携帯用の絵具箱、折りたたみ椅子といった便利グッズが普及してきたからでもある。技術の進化が、絵の歴史にも関わっていたというわけ。

プーシキン美術館展 ポール・セザンヌ/サント・ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め
ポール・セザンヌ 《サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め》 1905-06年

鉄道網の発達で、画家たちも南フランスや地中海沿いへ

パリからの鉄道網が発達すると、郊外に出かけて気軽にレジャーを楽しむ人々も出現する。画家たちも鉄道を使って郊外に取材旅行へ出かけ、さらに南フランスの海辺やスペイン国境に近い地中海沿いまで足を伸ばすように。

ポール・セザンヌは、フランス南東部のプロヴァンスを見渡せるサント=ヴィクトワール山を臨む見晴台のそばにアトリエを構えたそう。写真の《サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め》は、このアトリエからの眺めを描いたもの。今回の美術展では、セザンヌがこの作品より20年以上前に描いた《サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め》も出品されるそうなので、2つを見比べてみるのもいいかも。

プーシキン美術館展 アンリ・ルソー 《馬を襲うジャガー》 1910年
アンリ・ルソー 《馬を襲うジャガー》 1910年

万国博覧会などで世界の情報が集まるパリ。想像力で旅する画家も

19世紀のパリでは、万国博覧会でさまざまな異国の文化が展示され、メディアの発達もあって世界各地の情報が人々の手元にやってくる時代を迎える。画家の中には、ゴーガンのように原始的な暮らしを求めて南太平洋のタヒチ島へ旅立って現地で制作を続けるものもいれば、フランスを一歩も出ることなく熱帯のジャングルを何度も描いたルソーのような“想像力の旅人”も居た。

神話から始まって、郊外の自然やパリの都市風景、南フランスの豊かな自然から世界の風景へと目を向けていった、フランス風景画の4世紀に渡る歩みが一度に分かる展覧会。プーシキン美術館の素晴らしいコレクションで、「風景画」をめぐる時間の旅を満喫したい。

美術館閉館後にシャンパンと絵画を楽しむ。プレミアムナイトを体験できる「トレンド体験」に24名様をご招待

閉館後の美術館でゆったりと展覧会を鑑賞した後、館内レストランでロシアにもゆかりのあるフランスを代表するシャンパーニュ「ヴーヴ・クリコ」をいただく。2018年5月26日(土)の夜に開催される「プーシキン美術館展―旅するフランス風景画」のプレミアムナイトに、OZmall編集部と参加するトレンド体験イベントを実施します。学芸員のミニレクチャーも受けられるアートなひとときを楽しんで。

プーシキン美術館展──旅するフランス風景画 ポスター

プーシキン美術館展──旅するフランス風景画

イベント名
プーシキン美術館展──旅するフランス風景画
開催場所
東京都美術館 企画棟 企画展示室
開催日程
2018/4/14(土)~7/8(日)
開催時間
9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
休館日
月曜日
※ただし、4/30(月)は開室
夜間開室
金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
観覧料(前売)
一般 1600円(1400円)、大学生・専門学校生 1300円(1100円)、高校生 800円(600円)、65歳以上 1000円(800円)
ホームページ
プーシキン美術館展─旅するフランス風景画 HP
東京都美術館 外観

東京都美術館

電話番号
0357778600 0357778600 (ハローダイヤル)
住所
東京都台東区上野公園8-36 Map
交通アクセス
JR「上野駅」公園口より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分、京成線「京成上野駅」より徒歩10分
(C)東京都美術館

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NAOKO YOSHIDA (はちどり)

※記事は2018年3月5日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります