【恋する歌舞伎】第13回:生き抜くための大芝居!仮面夫婦の真の姿が今ここに

恋する歌舞伎

日本の伝統芸能・歌舞伎。興味はあるけどちょっと難しそう、わかりづらそう・・・なんて思ってない? 実は歌舞伎は恋愛要素も豊富。だから女子が観たらドキドキするような内容もたくさん。そんな歌舞伎の世界に触れてもらおうと、歌舞伎演目を恋愛の観点でみるこの連載。古典ながら現代にも通じるラブストーリーということをわかりやすく伝えるために、イラストは現代風に超訳してお届け。

更新日:2016/08/30

今回は歌舞伎座九月秀山祭昼の部で上演される、『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』に注目。「恋する歌舞伎」では、物語のキーパーソン・常盤御前(ときわごぜん)にスポットを当てて紹介します!

【1】噂の貞女が三度目の結婚!真相を調べるべく、実行された潜入捜査

平治の乱で、源義朝は平清盛に敗れ、源氏は没落した。

義朝に愛されていた、美女と名高い常盤御前は、義朝死後すぐに仇である清盛の妾となり、
さらに今では公家の一條大蔵長成(いちじょうおおくらながなり)の妻となり、
一條家の館で優雅に暮らしている。

都合のいい方へ軽々と乗り換える常盤御前に対し源氏の人々は
「常盤御前は義朝様とあれほど愛し合っていたのに、もう忘れたのか」
「源氏再興のお気持ちはないのか」
とやきもきしている。

とうとう我慢ならず、義朝の家臣、吉岡鬼次郎(きじろう)と妻のお京(きょう)は、
大蔵卿の館にしのびこんで常盤御前の胸の内を確かめようと作戦を練る。

この大蔵卿という人物は、毎日能・狂言に明け暮れており、
世間から「阿呆」のレッテルを張られている。

二人はそのことを利用して、お京を女狂言師として大蔵卿に召し抱えさせ、
常盤に近づくという計画を立て、実行。

作戦通り、屋敷に召し抱えられたお京はその日から潜入捜査を始める。

【2】夫は阿呆、妻は楊弓狂い。これでは源氏の未来は真っ暗・・・

数日後お京は、きらびやかな十二単を身にまとい、
源氏のことなど思い出す気配もない常盤御前の様子を鬼次郎に報告する。

落胆した鬼次郎はいてもたってもいられなくなり、義朝の追善のためにも、
常盤御前に恥辱を与えようと奥殿に忍び込むのであった。

その頃常盤は奥座敷で、的に矢を当てる楊弓遊びに興じていた。

この様子を改めて目にしたお京は、大事な義朝の恩も忘れ、敵方の妾になったり、
公家へ嫁入りしたりと、節操のない常盤御前を散々になじる。

鬼次郎も、奥方の心変わりが情けないやら憎らしいやら。
とうとう我慢ならず
「最早あなたは主人ではない」
と、常盤御前の持っている弓を取り上げ、思い切り打ち据えるのだった!

そんな二人に対し、常盤御前から意外な発言が飛び出す。

【3】明るみになる真実。すべては子を助け、源氏を再興させるための行動だった

自らへの暴力に怒るどころか
「あっぱれ忠臣!」
と誉め称える常盤御前。

源氏への厚い忠誠心があることが確認できたと、真実を話し出す。

平家に義朝を討ち取られた際、常盤御前も必死に逃げたが清盛に見つかってしまい、
子供、つまり後の義経たちもろとも殺されるはずだった。
が、清盛に身を捧げれば子の命を助けるという残酷な交渉をされ、
泣く泣くその道を選んだのだった。

夫を殺した男と枕を交わすのは
「毒蛇の鱗に巻かれるような」
心持ちだったと告白する常盤御前。
話を聞いて二人は心を痛めるが、
「その心がありながらなぜ毎日楊弓遊びに興じているのか」
と鬼次郎が問いつめる。

すると的と見せかけているその下には清盛の絵姿が!

こうして平家調伏のため、毎晩丑の刻に祈っているのだという。
真実を知った二人は、今までの無礼を詫びる。

と、三人が悲しみに暮れているところへ
「常盤御前の秘密を聞いたぞ!」
と、声が聞こえてきた。

【4】その日がくるまで真の姿を隠し、生き続ける源氏の皆々

なんと家老の一人が平家と繋がっているスパイで、一部始終を聞かれていたという、
絶体絶命の大ピンチ。

しかしこの悪人を御簾内から長刀で斬りつけたのは、あのうつけ者の大蔵卿だった!

先ほどと打って変わった勇敢な出で立ちに驚く一同。

大蔵卿は元々源氏の血筋であるが、今は訳あって公家の身分で暮らしている。
つくり阿呆として暮らしていれば、平家からも疎まれないだろうと、
20年以上芝居をしていたのだった。

鬼次郎夫婦には、自らの源氏再興の意思を頼朝や牛若(義経)に伝えてほしい。
また源氏の重宝友切丸を鬼次郎に託し、この剣で旗揚げするようにと命じる。

大蔵卿は夫のため、子のために、女の道に背いたのは貞女の鑑だと常盤御前を称えるのだった。

婚姻や恋愛が政治に影響を与える時代に生きていた女性の強さ、苦しさを、
常盤御前の生き様から感じる人も多いかもしれない。

『一條大蔵譚( いちじょうおおくら ものがたり)』

全五段からなる『鬼一法眼三略巻』のうち四段目が独立したもの。享保16年(1731)人形浄瑠璃で初演され、翌年京都嵐小六座にて歌舞伎で上演された。文耕堂・長谷川千四合作。主人公・一條大蔵卿の作り阿呆を装う姿と、本来の威厳ある姿の演じ分けが見どころとされる。

『秀山祭九月大歌舞伎』
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/493

監修・文/関亜弓 イラスト/カマタミワ

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