プロジェクトの原点 Sony「NEX-7」

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「こだわりをもって写真を撮りたい」――そんな声に対するソニーからの回答がデジタル一眼カメラ「NEX-7」だ。ストイックな外観を持ち、小型軽量と高画質を両立したこのマシンの「原点」はどこにあったのだろうか? 企画を担当した同社の立川博之に聞いた。

新規格「Eマウント」の挑戦

立川博之(ソニー株式会社)
大学時代は建築学科。「当時から研究やプライベートで一眼レフカメラを使っていて、写真を撮る楽しみは知っていました」(立川)。
 「企画の原点は、ユーザーの皆様がどんなニーズを持っているのかに気づいたところにありました」
 NEX-7誕生のストーリーをそんな言葉で語り始めたのは、ソニーの商品企画部門に所属する立川博之。入社10年目。2009年発売のα550に続き、2つめに手がけた製品がNEX-7だった。

「NEX-7に先行してNEX-5、NEX-3というカメラを出していました。これらEマウントカメラは、そもそも一眼レフの画質の良さや楽しさをコンパクトサイズで手軽に持ち歩いていただきたい、というコンセプトで作られたものでした」

 マウントとは、レンズ交換式カメラにおけるレンズ接合部の規格のこと。キヤノンの「EFマウント」、ニコンの「Fマウント」など、各種マウントがあるが、ソニーもデジタル一眼カメラαで「Aマウント」という規格を採用していた。そこに、新たにEマウントという新しい規格を作り、ミラーレスのレンズ交換式カメラであるEマウントカメラをリリースしたのだ。

 ちなみに、「ミラーレス」とは、一眼レフからミラー(レンズから入った像をファインダーに届けるための鏡)を取り除くことで小型軽量化を実現したカメラのことだ。

「当初のEマウントカメラのターゲットは、コンパクトデジカメでは飽き足らずにステップアップするユーザーでした。ところが、NEX-5や3は一眼レフに精通しているハイアマチュアの方がサブカメラとして持つというニーズもあることがわかって。じゃあそういう方たちに向けた新しいコンセプトのカメラにも挑戦しようというところから、もともと内部では構想されていたNEX-7の開発が本格的にスタートしました」

妥協なき「機能美」の追求

立川博之(ソニー株式会社)
立川の前にあるのは、左からNEX-7、NEX-5N、α900。α900はソニーのAマウント最上位機種で、フルサイズのセンサーを備える。
 小型で軽量のボディに、一般的な一眼レフと同等のAPS-Cサイズの大型センサーを搭載――そんなEマウントカメラの特徴をそのまま残しつつ、ハイアマチュア層にニーズの高い高画素化、有機ELファインダーやフラッシュの内蔵といったグレードアップに挑んだ。
 立川は言う。

「最初に技術サイドから上がってきたモック(実物大の模型)は、とてもじゃないですが、『小型』とは呼べませんでした(笑)。しかし、我々としては『軽さと大きさは絶対犠牲にしてはいけない』と考えていました。そこで、『本体重量は300g以下』といったガッツ目標(頑張って目指すべき目標)を作り、毎日のように様々な立場の部署がぶつかり合いながらNEX-7を形にしていったんです。ケンカのようなやり取りになったこともありますが、無理難題を出されれば出されるほど奮起してしまうスタッフのおかげで(笑)、一つ一つでき上がっていきました」

 一見すると、NEX-7はストイックでクラシカル、そしてシンプルな外観だ。立川たちは、そこに折り紙状にたたみ込まれる精緻なフラッシュを搭載させた。また、有効約2430万画素のセンサーと、XGA有機ELを採用した非常に見やすいファインダーを小型ボディの中に収めきることにも成功した。センサーと有機ELはソニーが独自開発したものだ。

「最後まで妥協せずに追求していった成果だと思います。製品の形には理由があります。撮影しながらダイヤル類を操作するならファインダーはどこにすべきか。ダイヤルの位置や形状はどうあるべきか。NEX-7は、そういった本質を形にしたカメラなんです」

 美しさにまで昇華させられた高機能。このマシンから醸し出される独特のたたずまいは、「機能美」と呼ぶにふさわしいものだろう。

タイの大洪水で工場が浸水

立川博之(ソニー株式会社)
「この精密感は、一つ一つ計算し尽くされた上でできあがっているものなんです」と、自慢の機能を楽しげに紹介してくれた。
 発売までには大きな困難も経験した。昨年7月に発生したタイの大洪水である。NEX-7の生産はタイの工場で行われていたが、その工場が水没してしまったのだ。

「本当に大変でした。私たちはテレビ会議を通じて映像を見たんですが、船に乗らないと工場に入っていけないような状態でしたね。でも、タイの現地スタッフが本当に頑張って再度生産を立ち上げてくれて、製品を世に送り出すという一つの目的のために全力で動いてくれたんです」

 NEX-7は2011年11月発売予定だったが、実際に発売されたのは2012年1月27日。遅れはわずか2ヶ月にとどめた。

「発売されたときは、感無量でした。しかも、多くの方に高い評価をいただいていて。私たちがNEX-7に込めた思いがきちんと届いているな、という実感が持てました。私自身、量販店の売り場に足を運んだんですが、男性だけでなく、女性のお客様も手に取ってくださっているのを見ました。やはり、ミラーレス一眼という市場は着実に広がっているな、と思いましたね」

 NEX-7を生み出したことは、立川自身もプロダクトプランナーとして得るものが多かったようだ。

「大げさに言えば、私の人生の分岐点でしたね。企業にはたくさんの人間がいて、様々な立場でプロジェクトに関わります。各々の立場を越え、スタッフ全員が一丸になってベストを追求するというプロジェクトを経験できたことはとても貴重でした。そういう意味では、私にとってNEX-7は幸せな経験をさせてくれた製品だと思います」

 様々な障害を乗り越えて完成した高機能一眼カメラ、NEX-7。もしも店頭で見かけたら、ぜひ一度手に取り、コンパクトなボディに凝縮されたソニーの技術と“思い"を感じてみてほしい。
  • 立川博之(ソニー株式会社)
  • 立川博之
    ソニー株式会社 PI&S事業本部商品企画部門商品企画2部3課。プロダクトプランナー。35歳。2002年、新卒で入社。ソニーマーケティングでのマーケティング・営業業務を経て、「ソニーに入社したからにはもの作りに関わりたい」と2008年より現職。


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