プロジェクトの原点 セイコー「ブライツ アナンタ Limited Edition 2012」

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精密なメカニズムやステータス性から、世界中に多くのファンを持つ高級機械式腕時計。ロレックス、オメガ、タグホイヤーなどそうそうたるスイスブランドが居並ぶ中、「ジャパンプライド」を掲げるセイコー「ブライツ アナンタ」から、「日本の伝統美」をテーマにした限定モデルが発売される。その美しさの秘密は「歌舞伎」にあった!

グローバルブランドとしての挑戦

古城滋人(セイコーウオッチ株式会社)
もともとファッションが好きで、「セイコーの時計づくりにファッション面からアプローチしてみたい」という思いから入社したという古城。
 ひと目でインパクトを与える時計。とはいえ、ただ単に派手なのではなく、見る者の心に訴えかけてくる上質さを伴った存在感――。  セイコーが7月7日に世界限定800本で発売するセイコー ブライツ アナンタ「Limited Edition 2012」には、そんな魅力がある。男心として「純粋にカッコいい」と思う一方、「いったいこの時計のどこに魅力の秘密が隠されているのだろうか?」と探りたい衝動にも駆られる。
 すぐ目につくのは、漆黒のダイヤル(文字盤)。そして、サブダイヤルを縁取る三日月のような赤のラインだ。

「実は、この黒と赤は漆塗りなんです。ダイヤルの黒は、金沢漆器の伝統を受け継ぐ漆芸家・田村一舟さんが手がけているもの。また、赤のラインは日本の伝統芸能である歌舞伎の『隈取り(くまどり)』を取り入れています」

 そう教えてくれたのは、セイコーウオッチでブライツ アナンタ「Limited Edition 2012」の企画開発を手がけた古城滋人だった。

「セイコーには様々な腕時計ブランドがありますが、ブライツ アナンタは高級グローバルブランドとして2009年から展開が始まりました。私もその翌年から開発に携わっているのですが、やはり悩んだのは『全世界同一モデル』という点です。腕時計のニーズは国や地域、人種によって異なります。たとえば、欧米ではサイズが大きいものが好まれますし、逆に日本やアジアはコンパクトなもの、中近東だと金色など派手なものが人気なんです」

 グローバル化が進む現在、同じ悩みを抱えている企業や開発者も少なくないだろう。ニーズの違いをわかっていながら、“世界同一モデルで勝負せよ”というのが古城に与えられた使命だったのだ。また、高級機械式腕時計は、メーカーそのもののイメージをも左右する。立ち上がったばかりのブランドを軌道に乗せるという使命もある…。
 大きなプレッシャーの中、古城は一つの回答にたどり着いた。

「グローバルブランドで大切なのは、ブレないコンセプトです。それは、やはり『日本』であったり、『日本らしさ』『日本の伝統や文化』だと思い至ったんです」

一枚一枚手作業で塗られたダイヤル

「Limited Edition 2012」と兄弟モデル「SAEH011」
遠目にも黒い文字盤と赤いラインが印象的で、存在感は抜群。右下にあるのは、同時発表の兄弟モデル「SAEH011」。
 世界には、スイス製を中心とした数々の腕時計ブランドと製品群がある。いくら日本企業が精密なものづくりに秀でていると言っても、腕時計はある程度形の決まったものだけに、ただ売り出すだけでは埋もれてしまう。
 古城は言う。

「キラリと光る何かが必要なんです。性能・価格・デザインはもちろん、その商品やブランドが持っている歴史、ストーリー、オリジナリティといったものがきちんと伝わってこそ、初めてお客様に手に取ってもらえるんです」

 古城が発見したのは「日本の伝統美」だった。
 もともと、2009年のファーストモデルから、ケースデザインに日本刀のモチーフが取り入れられてはいた(側面から見ると確認できる)。古城は2012年の限定モデルを開発するに当たり、さらに「日本の伝統美」を追求した。

「デザイナーとの話し合いの中で、世界的に注目される日本文化で、認知度も上がってきている歌舞伎を取り入れようという話になりました。歌舞伎役者の顔に強さや表情を与える隈取りは、腕時計の“顔”であるダイヤルにはうってつけのモチーフでした。また、漆塗りは以前から採用していたのですが、英語で漆を“japan”と表現するので、日本らしさをアピールするには最適だったんです」

 しかし、ダイヤルに漆塗りを使うのは簡単なことではない。通常、漆塗りは木など表面に細かな凹凸のある素材に施すもの。つるつるした金属のプレートに塗ると弾いてしまう。

「そこはもう、熟練した田村一舟さんだからできる匠の技です。このモデルのダイヤルは田村さんが一枚一枚手作業で漆を塗っています。世界限定800本ですが、実際にはダイヤルを2000枚ほど塗ってもらったうちの800枚。表面にひびが入ったり、こすれてしまったり…とやはり簡単にはできないんですね。相当な手間と労力、根気も必要です。しかし、それこそが日本の伝統美のエッセンスではないかと思います」

メッセージを発する時計づくり

古城滋人(セイコーウオッチ株式会社)
「この時計を通じて、若い世代のお客様にも、腕時計というものが持つ世界共通の価値や奥深さを知っていただきたいですね」
 ブライツ アナンタ「Limited Edition 2012」の開発がスタートしたのは、実は昨年の東日本大震災の直後だったという。

「震災を経て、私自身、日本の良さや素晴らしさ、伝統を見直す気持ちになりましたし、お客様のニーズとしても似たものを感じました」

 震災が契機になり、もともと「ジャパンプライド」のコンセプトで日本刀というモチーフを持っていたブライツ アナンタに、さらなる日本らしさが注入されたのだ。
 また、古城も自分自身が持つポリシーを貫いて開発に当たった。

「約1年ちょっとの開発期間で、私は田村さんや工場の職人さんなど、この時計に携わる人たちとフェイス・トゥ・フェイスで企画意図や方向性などを伝えてきました。電話やメールを使えば、一切顔を合わせずに製品をつくり上げることができるシステムはあるんです。でも、きちんと人同士が向き合ってつくったかどうかは、最終的な商品の仕上がりに如実に表れるんですね。開発者の気持ちが伝われば、職人や技術者も言葉では表現しづらいひと手間を加えてくれたりします。その集積が商品には反映されますし、不思議と数字(売上)にも出てくるんですよ。きっと、作る側の凝縮された思いがお客様の心にも届くのではないでしょうか」

 3月にスイスで開催された今年の「バーゼルワールド(世界最大の宝飾と時計の見本市)」では、ブライツ アナンタ「Limited Edition 2012」は世界中のバイヤーから高い評価を受け、海外の専門誌にも取り上げられたという。
 時計は喋らない。しかし、国境を越えて人の心を打つメッセージを発することができる――。それをブライツ アナンタ「Limited Edition 2012」は証明したのである。
※アナンタ=無限
※敬称略
  • 古城滋人
  • プロフィール
    古城滋人
    セイコーウオッチ株式会社 セイコー第一企画部 一グループ 主事。39歳。1996年、新卒で入社。当初は営業部に配属されたが、2000年からカジュアルブランドの商品企画業務に携わり、2010年からブライツ アナンタの開発を担当。


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