プロジェクトの原点 SUBARU「アイサイト(Ver.2)」

はじめての方へ



オズモールTOP > オズモール for MEN TOP > プロジェクトの原点 SUBARU「アイサイト(Ver.2)」

快適なドライブとは何だろう。意のままに操れること、心にゆとりをもてること、安心して運転出来ること…。実は、それらすべての前提になるのが「安全」である。各社が安全技術を競い合う中、多くのドライバーの支持を集めているのがスバルの「アイサイト」だ。

自動ブレーキが急で強いのは「わざと」

榎本伸吾(富士重工業株式会社)
「アイサイトは“予防安全"の技術。同じ安全への取り組みでも、ABSやエアバッグとはポイントが違うんです」と榎本。
 まずは、スバルの先進運転支援システム「アイサイト」がどんなものであるのかを簡単にご説明しよう。
 アイサイトの機能は大きく4つある。(1)ふらつき・車線逸脱・先行車発進を教えてくれる「警報&お知らせ機能」、(2)AT車のペダルの踏み間違いなどによる誤発進を防ぐ「AT誤発進抑制制御」、(3)万が一のときに自動でブレーキをかける「プリクラッシュブレーキ」、(4)先行者の速度に応じてアクセルとブレーキを自動的に調整する「全車速追従機能付クルーズコントロール」だ。

 スバルにはアイサイト以前に「ADA(アクティブドライビングアシスト)」という運転支援システムがあったのだが(1999年~)、今回取材に応じてくれた同社の榎本伸吾はマーケティング推進部の一員としてADAに携わり、2008年の初代アイサイト、そして、2010年の現行アイサイトver.2まで一貫して関わってきた仕掛け人的存在である。

 今回の取材に先立ち、榎本の案内でアイサイトを体験させてもらった。障害物に向かって車をゆっくり走らせると、最初に警告音が鳴り、警告表示が出る。さらに近づいたところで軽いブレーキが自動でかかる。それでも運転者がブレーキを踏まないと、ググッときついブレーキがかかり、車は障害物の約50センチ手前でストップした。
 これはアイサイトの機能の1つである「プリクラッシュブレーキ」だ。驚いたのは榎本の言葉だ。

 「技術的には、もっと手前でスーッと滑らかに止めることもできます。ただし、アイサイトは自動運転システムではなく、あくまでも“運転支援システム”なので、ドライバーの過信や過度の依存を防ぐために意図的に、急で強いブレーキの掛け方をしているんですよ。いわゆる緊急自動ブレーキの位置づけです」

 つまり、「わざと」そういうブレーキのチューニングをしているのであって、「わざと」そうしなければ、障害物などのもっと手前でごく静かに車を停止させることも可能、ということなのだ。プリクラッシュブレーキという1つの機能からも、スバルの持つ技術力の高さがうかがえた。

「安全」こそがスバルの強み

(上)榎本伸吾(富士重工業株式会社)(中)障害物を感知(下)ステレオカメラ
フロントガラス上部に設置されたステレオカメラ(写真下)で前方の障害物や人、白線などを感知。各種の警告を発する(写真中)。
 改めて、榎本にアイサイト誕生までの経緯を詳しく尋ねてみた。

「実は、99年にレガシィに初搭載されたADAから現在のアイサイトver.2に至るまで、ステレオ(複眼)カメラを使って対象物とそこまでの距離、白線などを認識させるというコンセプトは変わっていないんです」

 それはつまり、当初のコンセプトが正しい方向性を持っており、現在まで正常進化してきたということを意味している。
 では、ADAとアイサイトではどこが変わったのかというと、複数あった機器が1つのユニットに統合されたのだ。システムはコンパクトになり、コストも下がった。

「正直言いますと、ADAはあまり売れていませんでした。機能的には良いものでしたが、価格が高かったため、いわば“高嶺の花"になってしまっていたんです。開発自体は89年から始められていたため、長い時間をかけて開発しても売れ行きがかんばしくなかったことで、社内で『いつまで続けるんだ』という声があったのも事実です」

そんな社内の声に対し、開発もコストを下げる努力を怠らなかった。複数のユニットを組み合わせたADAを1つのユニットに統合することに成功し、2008年に初代アイサイトを誕生させた。ところが、初代アイサイトもまた顧客に受け入れられなかった。

「当時、先代レガシィは約20万円プラスでアイサイト搭載車を選べたんですが、受け入れてくださったお客様は多くなかったです。20万円でも破格の値付けだったんですけど、お客様には高いと感じられたようです。そこで、2009年にエクシーガで13万5千円まで下げたものの、それでも苦戦しました」

 ちょうどこのころ、スバルには逆風が吹いていた。2008年にリーマンショックが起こり、景気が悪化した。また、2009年からエコカー減税などが始まったことでハイブリッド車が大ブレイクしたが、スバルにはハイブリッド技術がなかったために販売で苦戦した。

「でも、スバルには“安全"という強みがありました。ハイブリッド全盛の中でも、もう一度安全を前面に押し出してみよう、バージョンアップしたアイサイトで“ぶつからない"という新たな安全を提案しよう、と私たちは考えたんです」

 榎本をはじめとしたアイサイトを推進するスタッフは一計を案じた。コストから積上げた価格ではなく、顧客は「アイサイト」に対していくらなら払ってもいいと考えているのかを調査したのだ。

「答えは10万円でした。コストから考えると10万円はありえない価格設定でした」

 社内では反対が多かった。たった2年で半額にするというのだから、ある意味当然である。いくら優れた安全技術でも使ってもらえなければ意味はない、顧客が欲しいと思える価格とし普及させたい――、榎本たちは社内試乗会などを積極的に行い、改めてアイサイトの魅力を周知することで説得していった。

20年越しで実った開発陣の執念

榎本伸吾(富士重工業株式会社)
「車やそこに搭載される技術は、我々からお客様へのプレゼント。『ワオ!』と驚いていただけるものをお届けしたいですね」
 2010年、ついにアイサイトver.2は約10万円という価格でリリースされた。
 当初、榎本たちはスバル車を購入する客の2割程度がアイサイトを導入してくれるだろうと予想していた。ところが――

「実際には、レガシィやフォレスターでは8割のお客様がアイサイト搭載車を選んでくださったんです。間もなく累計10万台です(2013年3月上旬時点)。予想を大きく上回るご支持をいただいていることになりますね」

 もちろん、ライバルメーカーも安全技術を持っている。だが、榎本はアイサイトの優位性を信じている。

「開発チームが20年かけて作り上げ、ようやく認められたのがアイサイトです。ステレオカメラという考え方はシンプルですが、そこで得た情報をどう取捨選択して、最適なチューニングや味付けするか、という部分では20年の技術の蓄積があり、これは一朝一夕で真似のできることではありません」

 一つ、榎本は伝えたいメッセージがあると言った。その相手は車好きの人たちだ。

「運転支援システムと言うと、車好きで運転に自信のある方は『そんなまどろっこしいものはいらない』と思われるかもしれません。でも、そうではないんです。アイサイトは車好きの方が自由に楽しく運転するのを邪魔しません。逆に、渋滞や疲労時のドライブ、緊急時といった部分をサポートするもの。つまり、大好きなドライブをより快適に楽しんでいただける技術なんです。“スバリスト(スバル車を愛するドライバー)"の集まりであるスバルの社員たちも、自社の技術だからということ抜きにアイサイトをいいものだと認めています。ぜひ一度、販売店でアイサイトを体感してください」

 この20年で時代は大きく変わった。自動車をめぐる状況はことさら変化が大きかっただろう。しかし、スバルの開発陣は一貫したポリシーに則り、変わらず安全を追求し続けてきた。その努力と執念が実を結んだものが、アイサイトver.2なのである。

※敬称略
  • 榎本伸吾(富士重工業株式会社)
  • 榎本伸吾
    富士重工業株式会社 広報部 商品広報 主査。45歳。東京都出身。早稲田大学法学部卒。1990年に新卒で入社。汎用エンジンを生産する大宮製作所、マーケティング推進部、商品企画部、経営企画部などを経て現職。
    現在の愛車はエクシーガ 2.5i EyeSight。


©1996-2013 Starts Publishing Corporation. ALL Rights Reserved.