OZmagazine編集長の「F太郎通信2017」5通目

F太郎通信2017

オズマガジン編集長古川が、日々の中で感じたことを、読者のみなさんに手紙を書くようにつづったエッセイのようなものです。

更新日:2017/08/06

F太郎通信2017

2週間に1回の、あなたとの文通のようなもの

 こんにちは。オズマガジン編集長の古川です。2週間ぶりですね。時間はあっという間に過ぎていくものです。夏も中盤。百日紅や夾竹桃、ノウゼンカズラといった夏を象徴するような花たちがあちこちで咲いています。

 僕は小学校に入学してから大学を卒業するまでずっと野球部で野球をやっていましたので、夏の思い出というと暑い中で練習をした思い出ばかりです。いま思い出すとよくもまぁ毎日あんなに一生懸命やったなぁと思いますが、あのとき身につけた生き方の姿勢のようなものは、今でもずいぶん自分の役に立っているような気がします。今日はその話を少しだけしたいと思います。

 例えば、これはずいぶん捻じ曲がった言い方に聞こえてしまいますが「聞こえのいい正論や一般論をそのまま鵜呑みにしない」ということは、今でも気をつけていることのひとつです。

「努力は必ず報われる」「練習はウソをつかない」。よく言われる言葉ですね。どちらもある意味では本当のことだと思います。努力をしたほうがしないよりも目標に近づくのは疑いようのない事実だと思います。でも、必ず報われるかどうかはまた別問題です。僕も高校時代にずいぶん努力をしたつもりですが、甲子園にはあと一歩のところで届きませんでした。一緒に努力をした同級生のほとんどは、最後の夏の大会でベンチに入ることすらできませんでした。その毎日苦楽を共にした仲間たちに向かって、大会前の練習で「大丈夫。努力は必ず報われるよ」なんてとても声をかけることなんてできません。

 それからもうひとつ。「自分の目で見て、自分の頭で考えて、そこで感じた自分の感覚を信用する」ということも、野球をするなかで身につけてきたもののような気がします。僕が通っていた高校は甲子園に何度も出ている、ある意味では野球の名門校だったので、決まりや規則が多い学校でした。その規律は伝統になり、強さの下支えをしていたように思います。多かれ少なかれ、強いチームにはそのような「決まりごと」があるものです。おのずと練習メニューから試合での指示に至るまで「決まりごと」が幅を利かせます。その中にいると、それはある意味では楽なことでした。そのシステムに自分を順応させていけば、考えなくてもある程度のレベルのことはできるのです。
 でも、それ「だけ」だと、どうしても限界に直面します。本当にいいピッチャーのボールは、ベンチの指示やセオリーだけでは絶対に打てません。打席に立ってピッチャーと向き合ったときの感じ、相手の表情、その日の自分の状態。それは打席に立ってみないとわからないことです。もちろん準備は必要です。でも打席の外であれこれ考えすぎることや、ガチガチのルールはかえって肩に力が入る原因になってしまいます。打席に入って、自分の目で見て頭を使って考えて、仮説を立てて柔軟に向かっていくしかないのです。

 野球の話になってしまいましたね。すみません。でもこれはあくまで例え話で、そのとき身につけた考え方を僕は本を作っている今も大事にしているということをお話ししたかったのです。

「聞こえのいい正論や一般論を鵜呑みにしない」
「自分の目で見て、自分の頭で考えて、そこで感じた感覚を信用する」

 言葉にすると堅苦しいですが、僕はずっとこのことを考えながら本作りをしてきたような気がします。もちろんオズマガジンは町歩きの便利な情報誌なので、そんな考え方が役に立つかどうかもわかりませんし、それを押し付けたりするつもりもありません。ただこの感覚がオズマガジンのどこかに静かに忍びこみ、読み終わったあとや使ったあとの読後感に1%くらい残ったら嬉しいなぁとは思います。

 世界というのは多様性に満ちたものです。僕たちが発信している情報も、世界のほんのほんの、ほんの一部です。そしてその一部も、僕たちが選んだものであり、僕たちが好きなものです。それに共感してもらえたらほんとうに嬉しいですけど、それを見て感じるのは、あくまで読者であるあなた自身です。嫌いだってあって当然です。そこにはどのような正義の押しつけも、どのような価値観の押し売りもあるべきではないと思います。
 そして結果として僕たちの発信や価値観を好きになってくださった方と、繰り返し繰り返しその交換をすることで、はじめてそこに信頼関係が生まれます。

 たかだか雑誌と誰かは言うかもしれませんが、僕たちはそういう信頼関係を作れるように、自分たちで情報を選択し、発信に工夫をしていたいと思います。ただ本を売りたいわけでもないし、本を買ってほしいだけではないのです。誰かを騙したり利用したりして手に入れた関係性の中に、長く続く信頼関係が醸成されることはありませんから。
 
 なかなか雑誌では書けないことが、ウェブページでは書けますね。サイトを始めてみてそれを実感として感じています。より手紙に近いといいましょうか、パーソナルな表現も含めて言葉でお伝えすることができるような気がします。

 長い文章になってしまいました(いつもですね)。今週もお付き合いいただきありがとうございます。本屋さんには最新号のオズマガジンがもうすぐ並びます。アート特集。ぜひ手にとっていただけたら嬉しいです。発売は8月10日です。

 ではまた、2週間後にお会いしましょう。いろいろなことがあると思いますが、できれば機嫌よく、笑顔で過ごせたらいいですね。オズマガジンやこのサイトが、そのあなたの毎日に少しでも役に立てたら、そう思います。よりみちしながら、ゆっくり生きましょう。

いい1日を。

雑誌OZmagazineは、日々の小さなよりみち推奨中。今日を少し楽しくする、よりみちのきっかけを配信していきます。

  • LINEで送る

TOP