編集部の「いい1日」リポート VOL.024

編集部の「いい1日」リポート

この連載では、編集部員が見つけた「いい1日」のヒントをご紹介していきます。特集のためのリサーチから、個人的な趣味の散歩、その他もろもろ、よりみちで出会ったことや感じたことをつづります。アート好きな編集部員スドウは、ずっと気になっていた美術館に初めてお邪魔してきました。

更新日:2017/12/01

南洋植物が植えられた岡本太郎記念館のガーデン。庭園内のあちこちに作品が展示され、奥には太陽の塔を制作中の太郎先生の姿も!

今日はゆるゆる、
元気をもらえるアートに会いに

こんにちは。美術館・展覧会鑑賞が趣味のスドウです。

年末も近付き、町もソワソワしはじめた11月末。いつも通りお昼近くに目が覚めた私は、しばしふとんに包まりながら、「今日はどの美術館に行こうかな~」と頭の中の「行きたい展覧会リスト」をめくります。

ですが、気になる展覧会は軒並み大混雑という噂。最近忙しかったし、今日はのんびりアートを楽しみたいなぁと思ったときに思い出したのが、表参道の取材中に見かけた≪こどもの樹≫でした。

≪こどもの樹≫は、青山通りのこどもの城(現在は閉館)前に置かれている、巨匠・岡本太郎先生のパブリックアート。昔はカラフルな顔が少し怖かったのですが、久しぶりに見た≪こどもの樹≫はニコニコかわいい。それに、なんだかこちらまで元気になるようなパワーがありました。

そうだ、今こそ岡本太郎記念館だ! と膝を打ち、私はいそいそと表参道へと向かいました。(いつもの通り、この時14時過ぎ)

上/サロンスペースに展示された調度品の数々。左手に≪こどもの樹≫のミニサイズが 下/1996年に亡くなるまで制作を続けたアトリエ。建築は、ル・コルビュジエの弟子である坂倉準三だそう

太朗先生のご自宅にて
先生みずからお出迎え

巨大なバナナの樹など、緑が生い茂る岡本太郎記念館は、青山のひっそりとした裏通りに立っています。学生時代から今日までかなりの頻度で近所をうろうろしていたのに、「いつか行こう」と思い続けて行けていなかった美術館のひとつでした。

太郎先生の住まい兼アトリエだった邸宅に展示スペースを増築したこちら。

小ぢんまりとしているし、今は日曜日の夕方だし、きっとそんなに混んでいないだろうと思って扉を開けると、予想以上の人の多さにやや圧倒されました。老夫婦から若いカップル、美大生っぽい学生など、その客層はさまざま。グッズコーナーも盛況で、色あせぬ太郎先生の人気ぶりがうかがえます。

まずは1階を拝見。サロンスペースにて、楽しみにしていた太郎先生(人形)とご対面! ミニサイズの≪こどもの樹≫や絵画、太郎先生がデザインした調度品に飾られたカラフルな空間に心が躍ります。

特に気に入ったのが、テーブルの上に置かれた、髭のおじさんを思わせるガラス作品! 大胆なデザインとファニーな表情に思わずニヤリとしてしまいました。

奥には当時の様子をそのままに残すアトリエが。制作途中のカンバス、散乱した絵の具など、まるでついさっきまで画家が絵を描いていたかのよう。

2階に本棚を発見し、天才はどんな本を読んでいたのかなぁと目をこらしたり、棚に立てかけられているカンバスにはなにが描かれているんだろうと想像したり。時が止まったアトリエにしばし見入ります。

上/一見広々とした展示空間のようですが、こちらは地下展示の様子を再現した30~40cmほどの模型。匠の業です 下/地下展示空間を俯瞰した模型。来場者はこの地下展示を見てから太陽の塔へと入っていきます

日本中が熱狂したEXPO’70を
ミニチュアサイズで疑似体験

2階では、2018年に改修を終え、恒久的な展示施設に生まれ変わる予定の≪太陽の塔≫に関する企画展が行われていました。

未来への期待感にあふれる一方で、どこかアングラな雰囲気も感じる60~70年代カルチャー。その象徴ともいえる太陽の塔は、一体どのように制作され、人々から迎えられたのかを辿る展示です。

≪太陽の塔≫は1970年に開催された大阪万博のパビリオンのひとつとして制作されました。塔の内部には、原始から現代までの進化の歩みを表した≪生命の樹≫という巨大なオブジェがあり、それらを見ながら塔の上へと昇っていったそう。

万博終了後に展示品は撤去され、かつ資料もほぼ残っていないということで、万博未経験世代の私は、近未来かつ途方もないスケールの展示だったという漠然としたイメージしかありませんでした。

今回は、精巧なフィギュア制作で知られる海洋堂協力のもと、≪生命の樹≫や太陽の塔内部の様子、地上の展示空間をミニチュアサイズで再現。そのクオリティの高いこと! ≪太陽の塔≫の圧倒的な存在感に常々惹かれていた私は2階に上がった瞬間目が爛々。なめるように各再現模型を見ていきます。

展示スペース自体はコンパクトで、見ようと思えばきっと15分ほどで終わるでしょう。

ですが、そこは日本が誇る海洋堂さん。原始人の暮らしを再現した展示スペースや、世界中のお面を集めた民俗学色の強い会場など、幅30~40cmほどの空間にみっちりと当時の展示の様子が再現されていて、その精巧さにうっとり。

隅々まで見入っていると、だんだんとその空間に身を置いているような感覚になってきます。

当時の万博会場の写真。後ろにチラリと見えるのは、≪生命の樹≫の再現模型です

万博を通して
天才が伝えたかったこと

また、当時の展示ルートを写真資料で紹介する映像も必見。展示の全体感が掴めるので、太郎先生が一体どのような意図を持ってこれらの展示を作ったのかが見えてきます。

いちばんしびれたのは、塔を出て最後に待ち受けている『世界を支える無名の人々』という展示。広い会場に飾られた無数の写真は、国を動かす大統領でも、世界を救った英雄でもない、毎日を必死に生きる「普通の人たち」です。

万博のテーマは、「人類の進歩と調和」。

原始生物から始まる壮大な歴史展示の後に来るのが、とても小さくささやかな、だけど唯一無二な私たちの暮らしという点に、太郎先生の人間に対する深い愛情を感じ、しばし心が締め付けられるくらい感動していまいました。

さらに、岡本太郎記念館を訪れたなら、庭の散策も見逃せません。謎の犬型植木鉢や、ペカーッとした笑顔に癒される太陽像、そして上を見上げれば、ちょこんとこちらを見下ろす太陽の塔!

不思議で愉快な太郎ワールドに身を置くうちに、心は明るく、なんだか前向きな気分になれました。

今回の戦利品たち。真ん中のボールペンは、太郎先生がふわふわ浮かぶシュールなデザインがお気に入り

アートなお出かけのお楽しみ
グッズもセンス抜群です

岡本太郎記念館はグッズも充実しています。ふわふわな触り心地の太陽の塔ぬいぐるみやマスキングテープ、ガチャガチャなど、誘惑がたくさん。特に太陽の塔グッズは種類も多く、迷った末に購入したのがこの3点。

エコバッグは、大胆過ぎるプリントに惹かれ即購入。もしもこのバッグを持って町をダッシュしている人を見かけたら、それは私かもしれません。

今まで知らなかった太陽の塔の全貌を巡る展示や、笑顔のかわいいカラフルな作品たちから元気をもらい、来たときよりも足取り軽く美術館を後にします。

つい「今しか見られない感」が強いキャッチーな展覧会を優先してしまいがちでしたが、これからは、今日の岡本太郎記念館のように「いつか行こう」と思っている小さな美術館や、常設展も観に行こうと決意。もっとたくさんアートに触れたいと改めて感じたのでした。

今日もお付き合いいただきありがとうございます。

来週は編集部員クマダがいい1日をお届けします。
それでは皆さん、いい1日を。

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