魅惑の料理を堪能できる凄腕シェフのビストロ

こんな言葉を聞いたことはある? “ネオ・ビストロ”や“ビストロノミー”という言葉を。その反対語は、おそらく「伝統的なビストロ」。近年、本場・フランスではビストロが“ネオ化”。つまり、昔ながらの情緒ある店とはひと味違う、現代的で個性が光るビストロが増えてきている。そのトレンドはフランスに限った話ではなく、ここ東京でも。今、東京のビストロには、わざわざ行く理由がある。

更新日:2017/05/25

東京のビストロ8軒

そもそもビストロとは、高級なレストランではなく庶民的な店。ワインと気軽なビストロ料理が楽しめる日常的なお店。そして、今、そんなビストロに、一流レストランで修業した経験がある腕利きシェフたちが、自由なスタイルで提案するビストロが増えている。つまり、確かに料理の実力はスゴいのに、店の雰囲気は至ってカジュアル。
そんな東京のおすすめビストロ8軒をご紹介。

パリで磨いた感性から生まれる、洗練されたビストロ料理

bistrot nous(末広町/フレンチ)

バーテンダーから料理の道に入ったという経歴のオーナーシェフ・磯貝喜夫さん。パリへ料理修行に向かった際のエピソードも豪快。フランス語はほぼ話せずツテもなく、ビストロを食べ歩いて気に入ったお店に履歴書を送って雇ってもらったのだそう。「フランス人の料理、ビストロに対する考え方や感性に触れたのがいちばんの収穫でした」という言葉が表す通り、考えの根底にあるのはおいしくて楽しければOKということ。「いろいろ食べてほしいからハーフサイズで出したり、リクエストで作るときもありますよ」。シェフのお話と料理を堪能したい方は、ぜひ特等席のカウンターで。

希少品種の無農薬野菜で作る
フランス郷土料理

Soleil du Matin(本郷三丁目/フレンチ)

みずみずしく野菜本来の味わいが楽しめるフレンチとして人気の「ソレイユ ドゥ マタン」。オーナーシェフの中山守正さんは、2年間のフランスでの修業時代に現地の野菜のおいしさに驚き、完全無農薬の野菜が食べられるビストロとしてこのお店をオープンしたそう。注目の料理は、季節の無農薬野菜のサラダ、フォアグラのテリーヌ、山盛りウニのクリームパスタ、フォアグラのポアレとトリュフのリゾット、肉の盛り合わせ。また、修業先のシャンパーニュ地方の料理も人気で、それに合わせるグラスシャンパンは980円~とかなりお得となっている。
野菜の魅力を再認識できるこだわりのお店に行ってみて。

フランスの星付き店仕込みの
クラシカルなビストロ料理

a table(末広町/フレンチ)

アヴィニョンの一ツ星店「ル・プリウレ」、ブルゴーニュの二ツ星店「レストランス」などで研鑽を積んだオーナーシェフの中秋陽一さん。星付き店で腕を磨きながらも、店を持つなら「気軽に楽しめるビストロ」と決めていたそう。自分のお店では「ただおいしいものを追及したい」と吟味の末、炭火焼きには松坂牛や佐賀牛といった高級レストランと同格の食材を使っている。さらにグルメな常連を満足させているのは、パイ包み焼きなどクラシックスタイルの定番料理。シェフが修行時代から蔵元を巡り、信頼を築いた生産者から直接買い付けるワインも、料理と一緒に楽しんで。

フランス料理の真髄を
カジュアルな雰囲気で

Bistrot Grand Soleil(西荻窪/フレンチ)

JR西荻窪駅からほど近く、住宅街の入り口にあるビストロ。テラス風席など南仏をイメージした開放的な空間で、オーナーの木村祐二シェフが手掛けるのはボリュームたっぷりの本格フレンチ。フランス修行で叩き込まれた「手間をかけてこそおいしい料理ができる」という信念を守り、5日かけて仕込むスープ・ド・ポワゾン、南仏やアルザス地方の郷土料理をアレンジした前菜、フランスから届く貴重な乳飲み仔牛のローストなど、1皿1皿に驚きと滋味が詰まっている。ランチも予約が必須の人気店だけど、平日はご近所のマダムが自転車で訪れるという気軽さも同居。

ライブ感あふれる“鉄板ビストロ”で
美食を満喫

SIZZLE(三鷹/フレンチ)

「KIHACHI」で料理長を務めたシェフ・池田秀一さんが手がけるのは、フレンチがベースの無国籍料理。「目の前で焼き上げる料理を五感で楽しんでもらいたい」との想いから鉄板で調理するスタイルを取り入れた新機軸で、美食の世界へ導いてくれる。華麗な手さばきでロゼ色に焼き上げられる和牛ステーキ、じっくり熱を加え、甘味や香りを引き出した鎌倉野菜。新島や三宅島などから届く鮮魚をお好みに調理してもらうことも可能。高級なイメージがある鉄板焼きをカジュアルに楽しめるのも魅力で、早くも三鷹のマストゴー・レストランに!

鯛茶漬けをヒントに生まれた
〆の名物フレンチ鯛めし

Bistrot a la demande(田町/フレンチ)

横田浩史シェフは地元・芝浦で10坪19席のビストロを開業。“仰せの通りに”という意味の名店を掲げる通り、横田シェフの心意気はメニューだけではなく、ブーランジェリーやテラス席まで、お客さんの要望を反映して作ってしまうほどで、8割以上が常連、そのうち5割がヘビーユーザーというのも納得。「日本の風土に合うフレンチを」と、扱う野菜や魚介は日本全国の契約農家や漁師から直送。魚・肉料理に加え、名物のフレンチ鯛めしを〆にいただけるおまかせコースもお得で人気。ブーランジェリーのパンは近隣オフィスや幼稚園に納める計画もあるという、地元愛にあふれたビストロ。

肉が食べたい日はココへ。
"ニクラシイ"料理が満載

シュングルマン(八丁堀/フレンチ)

130日間熟成させた超熟成短角牛のビステッカや、国産肉8~10種で作るシャルキュトリーの盛り合わせなど、メニューには全国各地の肉を使った料理だけでも約30種! 「月毎に銘柄が替わる鶏炭火焼きは、47都道府県の地鶏を片っ端から試しているところ。自分の中で1位を決めようと思って」と壮大なプランを語るのはオーナーシェフの小池俊一郎さん。帝国ホテルで修業を積み、前店の「東京バルバリ」で数々のヒットメニューを打ち出した伝説を持つ小池さんらしい探究心は、ここ八丁堀でも健在。そのうえ「希望があればなんでも承ります」と懐の広さも拡大。食いしん坊達を満たしてくれる1軒。

ガストロノミックミールを
肩肘張らずにいただく至福

& ecle アンド エクレ(表参道/フレンチ)

ガストロノミーの技術と日本の食材との出会いが生み出す新しい味覚を堪能できる、注目のネオ・ビストロ。象徴的なメニューが「クーリシャス」。みずみずしいトマトのクーリ、濃厚な人参のクーリなど、シェフの高度な技術が可能にした、野菜本来の味がするフレンチソースとライス、海の幸、畑の恵みが絡み合い、口中で広がるのはまさに至福。スパイスやハーブとの絶妙なバランス、南仏出身シェフらしい鮮やかな色彩感覚もため息もの。米をはじめとする食材は日本各地から取り寄せ、日本のチーズやワインもセレクト。異文化の融合がテーマのダイニングの雰囲気も、美食の世界を後押ししてくれる。

ビストロの現在地

本場フランスの“ネオ・ビストロ”や“ビストロノミー”は、いずれも今から10年くらい前に生まれた言葉で、ほぼ同じ意味で使われている。それは、一流レストランで修業した、高級フランス料理のことをよく知るシェフたちが、あえてビストロのようなカジュアルさを加えて作る料理やレストランのこと。そんなネオ化したビストロがフランスのみならず、東京でも少しずつ現れてきたのではないか?と感じる昨今。ひと昔前は“パリのビストロ”と聞くと、「店内はウッディな雰囲気で壁には絵画、テーブルの上には赤いギンガムチェックのナフキン、黒板メニューがある」のような固定イメージを勝手に持ってたけれど、今、ビストロは多様化(いわばサードウェーブ化?)。インテリアも現代的で、自由なスタイルで“ビストロ”を表現している。そして、もともとが日常使いの店なればこそ、パリにはパリの人々の暮らしに根差したビストロが育まれてきたように、東京には東京のライフスタイルに合うビストロがさまざま生まれつつあるわけで。今、東京を見渡せば、わざわざ行くべき理由のあるビストロを見つけることができる。

『メトロミニッツ』とは?

2002年11月、創刊。東京メトロの駅構内で配布されているフリーマガジン(全52駅構内の専用ラック160台にて配布)。毎月、「東京」と「食」をキーワードに、たわいない日常の価値を上げるヒントが見つかるような特集作りをめざしている。発行はオズモールと同じくスターツ出版。

WRITING/SATORU HENTONA(bistrot nous、Soleil du Matin)、7Q7MIZUHO AJIHARA(a table、Bistrot a la demande、シュングルマン)、7Q7AKIKO TOKURA(Bistrot Grand Soleil、SIZZLE、& ecle) PHOTO/KENTARO MAKITA(bistrot nous、Soleil du Matin)、MIHO NORO(シェフ写真/a table)、RYO YONEKURA(a table、Bistrot Grand Soleil、シュングルマン)KENTARO HANAMURA(シェフ写真/シュングルマン)、HISAKO KATAYAMA(SIZZLE、Bistrot a la demande)、TAKEMI KATO(& ecle)

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