おもしろいこと、この地から。週 刊 東 北! Vol.006/Reborn-Art Festivalの見つめるもの(宮城県石巻市)

おもしろいこと、この地から。週 刊 東 北!

【毎週水曜 16:00更新】
2016年7月、石巻の埠頭で開催されたReborn-Art Festival×ap bank fes 2016は、“音楽”と“アート”、そして“食”をテーマに掲げた“総合祭”。音楽プロデューサー小林武史さんを中心に構想4年を経て、参加者のべ4万人が集った3日間。地元の人々の営みに間近に触れたり、アートの世界に浸ったり・・・来年の本祭に向けReborn-Art Festival×ap bank fes 2016が伝えたいメッセージとは?

更新日:2016/08/31

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渥美さんは、若手漁師が活躍するチーム“FISHERMAN JAPAN”に所属。4年もののホヤは、webでも販売

手を動かし見えてくるもの
地元の営みを肌で感じて

Reborn-Art Festival×ap bank fes 2016の前夜祭が行われた7月29日。日中、Reborn-Art Tourが開催された。参加者はバスで牡鹿半島をめぐりながら、荻浜小学校や隣町の女川町などの各ワークショップ会場へ移動。地元の漁師やお母さんたちと共に手を動かし、漁業体験や工芸体験など、この地に根づく仕事や暮らし、生活と直に触れ合った。

「石巻の魅力は…やっぱり海ですね」
漁船を操りながらそう話してくれたのは、ホヤ漁体験をナビゲートする漁師の渥美貴幸さん。牡鹿半島・谷川浜地区の若手漁師だ。

ホヤ漁体験に参加したのは全国各地から集まった12人。小型漁船に乗り込み、浜から100mほど沖へと向かう。ホヤの養殖場で渥美さんらがロープを引き上げると、水面から50個ものホヤが球状に集まった“ホヤ玉”が次々と姿を現す。赤々としてツノの生えたホヤの独特の形状に参加者から歓声が上がる。

「ようやく出荷できるようになった4年もののホヤです」ホヤをさばき、ぷるんとしたオレンジ色の身を取り出しながら、渥美さんは話す。えぐみの無い採りたてのホヤをほおばると、口いっぱいに甘みと潮の味が広がる。

入り組んだ地形と、豊富なプランクトンがホヤの養殖に適した谷川浜地区の鮫浦湾は、震災の津波によって壊滅的な被害を受けた。ホヤの出荷が再開されたのは、つい一昨年のこと。「石巻には若い漁師が多いんです。これからの漁業を考え、行動していく人が多い。海を切り離して、ここでの暮らしは考えられません」海と共に力強く生きていく人の姿が、そこにはあった。

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アクセサリー作りなどのワークショップが行われた荻浜小学校は、2017年の本祭でもキーとなるスポット

2017年に向けて
訪れる人にアートが果たせるもの

今回、アートも重要なファクター。Reborn-Art Festival 2017に向け、牡鹿半島一帯にアート作品を展示していく試みも動き出している。

参加アーティスト約40組をキュレーションするのは、東京のワタリウム美術館館長の和多利恵津子さんと、CEOの和多利浩一さん。
「アートって癒しだけでなく、自分とは何なのかをダイレクトに問いかける過激な面もある。小林武史さんに声を掛けてもらった時、みんなが楽しむイメージの音楽フェスと一緒にやる必要があるのかな?と思ったんです」。けれど、Reborn-Artに“生きる術”を見つめ直すという強いメッセージがあることを聞き、考えが変わった。

さらに、小林さんに誘われ石巻や牡鹿半島を訪れて、アートにできることがこの土地にある、と感じたそう。
「震災を乗り越え、未来に新しいビジョンを持ってエネルギッシュに暮らす、地元の人たちと出会ったんです。東京にはない力を感じました」。
現在、JRやギャレス・ムーアなど世界各国のアーティストと共に準備を始めている。石巻のパワーを受け取り、アーティストや作品が変化し、ここでしか生まれないものが創り出される。そして、よりパワフルになったアートのメッセージは、石巻の人々や、訪れる人々の心を強く揺り動かす。
「自分たちがどう生きていくのか。それぞれが自分自身に問いかけていくのではないでしょうか」。

会場の片隅で、木材の端材を使い木像を彫り続けていたのが、震災直後から石巻で支援活動を続けるアーティストのパルコ キノシタさん。来年の本祭に向け、1年間で3900体の木像を彫る作品プランを計画している。
「津波にすべてが流されて。でも、海とは反対の山は変わらずきれいなまま。そのギャップが思いもしなかったんだよね。石巻に、海と山の両方の恵みがあったことに気が付いたんだ」。震災の津波によって奪われた約3900人の命。彼は自然の恵みである木を使い、魂を込め仏像を彫ることで祈りを捧げ続けている。

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ワタリウム美術館の和多利悦子さん(左)、浩一さん。背後の作品はギャレス・ムーア「World Gate (Clock) / 世界のゲート(時計)」

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会場の真ん中には鈴木康広さん作・全長30mの巨大な“空気の人”が横たわる。直に触ると、いつも周りにある空気を感じられた

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29日のワークショップで参加者が彫った木像に囲まれるパルコ キノシタさん

小林武史さんが地域の人と共に
今、見つめているものは?

音楽プロデューサーの小林武史さんが石巻の地でアートフェスティバルを開催するという構想から4年。Reborn Art=“生きる術”を掲げた理由は何だろう?

「一般的な音楽フェスでは、音楽を聴いて楽しんだら終わってしまう。でも、作品が地域に展示されたら、じっくりとアートと向き合える。地域の人と対話しながら、地域を巻き込んで行われれば、土地と訪れた人との出会いも生まれますよね」。
小林さんは、2011年に石巻の地を訪れ、何度も通いながら、そこで生きる多くの人と触れあった。漁業などの地場産業のクリエイティビティと生きるというエネルギーを感じたという。
「石巻をはじめ東北の土地に触れることと、自分の生き方を見つめ直すこと。このイベントは両方を大切にしたい。僕たちが今回伝えたいことなんです」。

会場でフェスを楽しむ石巻の隣町・女川から来た女の子たち、植木紀子さん、智子さん姉妹、高橋小紅さんは言う。「まさかここでこんな大きなイベントができるなんて、思っていませんでした。普段はただ車で通りすぎるだけの場所でしたから」
「自分たちの町でこんなにたくさんの人がイベントを楽しんでいる。それが素直にうれしい!!」

小林さんは最後にこう続けた。「このプロジェクトが石巻にどのように浸透していくのか、土地の人や参加者とともに2017年に向けて進んでいきたいと思っています。石巻で受け入れられて初めてこのイベントのメッセージは伝わるようになりますから」。

どう生きるのか、はみんなにとっての「自分ごと」。“音楽”“アート”“食”という生きることを取り巻く要素を通じて、牡鹿半島という土地との縁がつながり、多くの人に手渡されていく。参加した人、迎えた人、そしてこれから参加する人みんなが、この縁の輪の一部だ。Reborn-Art Festival×ap bank fes 2016は通過点。Reborn-Art Festival 2017、そしてその先の未来へと、今、種がまかれたばかり。

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暑い3日間だったけど、みんな元気!植木紀子さん(右)、智子さん(左)姉妹は地元・女川で音楽イベントを主催する音楽好き。高橋小紅さん(中)は「地元で人生初フェスです!」と嬉しそう

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Bank Bandでの演奏でも4万人を魅了。総合プロデューサーの小林武史さん

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荻浜小学校近く、牡鹿半島の静かな夕暮れに。やわらかい夏の光がさしていた

【今週出会った、東北の素敵な場所】
Reborn-Art Festival×ap bank fes 2016

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牡鹿半島や石巻で2017年に開催されるReborn-Art Festival 2017。Reborn-Art Festival×ap bank fes 2016は、そのプレイベント。アート・音楽・食を通じ、地域とアーティストが協力して作り上げる「総合祭」をめざす。

写真はステージ裏のテント。石巻ジュニアジャズオーケストラや、石巻市立桜坂高等学校合唱部など地元の団体も参加。小林さん率いるBank Bandとのコラボ演奏は迫力満点

WRITING/MACHIKO HOSHI(shoepress)  PHOTO/KOHEI SHIKAMA(akaoni)

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