おもしろいこと、この地から。週 刊 東 北! Vol.016/「イノベーション東北」って知ってる?

週刊東北!

【毎週水曜 16:00 更新】
Googleが2013年から進めている「イノベーション東北」は、人と人をマッチングして心をつなぎ、新しいものを生み出す場所。このプラットフォームは、年々熱気を増し、メディア等でも取りあげられるように。今回は2013年からイノベーション東北の顔として活躍している松岡朝美さん(グーグル株式会社防災・復興プロジェクトプログラムマネージャー)に、いまの活動について語ってもらいました!

更新日:2016/11/09

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「イノベーション東北」松岡朝美さん(右奥)とチームメンバー。社内にはGoogleマップとともに、松岡さんたちが出会ってきた東北のお母さんたちや商店を営む人、職人さんなど、たくさんの方たちの写真が飾られている

松岡さん、「イノベーション東北」ってなんですか?

松岡さん 「イノベーション東北は、“東北の人たち”と、“東北のために何かしたい!という思いを持つ全国の人たち”とをつなげることで、新しいものが生まれるきっかけを作りたい ―― そんな想いからスタートしました。

思い返すと、2013年のスタート当初は、九州出身の私にとって“東北=寒くて大変な場所”でした(笑)。でも何度も足を運んで、いろんな人と話をしてみると、熱くておもしろい人ばかりで。忙しくても、無理、NOは言わず、できることを考える。お話を聞いて涙したり、心を温めたり、そんなことを積み重ねながら、人と人をつなぐお手伝いをしてきました。

これまでに、気仙沼の水産業者と、女子高生のコラボレーションによる「なまり節ラー油」や、100人以上が投票に参加してくれた「福島の子どもたちの世界が広がる、100冊」など、約500件のプロジェクトがここから誕生しました。
今年の春以降は、熊本・大分と東北の人たちをつなげて、震災後の知見を共有しつつ、さらに新しいプロジェクトが進行しています。

実際のプロジェクトには、デザインや経営など専門的な技術でプロジェクトに関わる“プロボノ”参加のほか、新商品のネーミングのアイディア出しやSNS拡散のお手伝いなど、誰でも気軽に参加できる“ワンタイム”があります。おかげさまで、日々プロジェクトに関わる人が増えています!」



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表情豊かに語る松岡さんの「ともみんスマイル」は、東北のどの地でも人の心を開いてくれる

人と人がつながると、
どんなことが起こるんですか?

松岡さん「何度も東北へ足を運び、たくさんの人や企業と関わる中で気付いたのは、東京など都市部では当たり前のように使われている技術も、それ以外の地域ではまだ一般的ではないものが多いということ。こうした技術と地域とをつなぐことで、小さな変化かもしれないけれど、新しい可能性が生まれるんじゃないか、そして、今までとは違う未来が見えてくるんじゃないか・・・と思っていて。

そこで、今年、情報科学芸術大学院大学 (IAMAS) という大学と協同で立ち上げた新しいプロジェクトが「Field Hack」です。これは全国の参加者が実際に、テーマとなる地域を歩きながら、飲食店にお客さんを集めるにはどうしたらいいかなど、街が抱える課題を見つけ出し、“ここがもう少しこうだったら・・・”“こんなことができそう!”と、それぞれアイデアを出し合いながら、その街に暮らす人々の暮らしを豊かにする方法を探っていくものです」


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「あたらしいスタート」を応援する町・宮城県女川町でのField Hackの風景(2016年5月開催)。「女川にいさん」「女川ねえさん」と呼ばれる地元の方たちが港や森の中を案内しながら、参加者33人が各々、インターネットや技術の力で生み出せるアイディアを考案していく2日間。女川町の須田善明町長も一緒に場を盛り上げた。10月5~6日には岩手県遠野市でも実施

イノベーション東北や、FieldHackを通して
いままでにどんな出会いがありましたか?

松岡さん「今年5月に宮城県女川町で開催したFieldHackの例を挙げると、とある水産業者さんは、魚が水揚げされると、全国各地にいるバイヤーさんにLINEを使って連絡していたんですね。一人ひとりに送るから、時間も手間もかかってしまう・・・。そこで、参加者が知恵を絞って、水揚げされた魚を写真に撮ったら、自動でバイヤーさんたちに送信される仕組みを作ろうということになったんです。

地域の人にとっては、技術開発=お金がかかりそうとか、専門業者にお願いしなきゃ難しいというイメージがあるから、初めはみんな半信半疑。「そんなのできっこないよ」と言っていた人が、実際にカタチになったものを見ると「おぉ!すごい!」と感動してくれるんです。
協力者であるサポーター(参加者)も、東北の皆さんが喜んでくれる姿を見ると素直に嬉しいし、自分が持っている技術をもっと活かせるんじゃないか・・・とまた新しい可能性に気付くこともあって。

イノベーション東北や、FieldHackを通してでなければ出会わなかったような人たちがつながって、誰もが想像していなかったようなモノが生まれたり、コトが起こる瞬間は本当に興奮しますよ!」




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イノベーション東北スタッフと遠野にて/ツール・ド・三陸の様子をGoogleストリートビューで撮影する松岡さん/今年松岡さんが何度も訪れている、岩手県遠野市のアイコン・かっぱのお菓子

「東北」は松岡さんにとってどんな場所ですか?

松岡さん「呑み友達でもあり、先生でもあり、ときには兄弟姉妹のようであり・・・増えていく一方ですね。
私たちが大切にしているのは、同じ時間を共有すること。どんなに距離が離れていても、電話やビデオ会議で直接やりとりしたり、心と心をつなぐための努力は惜しまないようにしています。だからこそ、一致してひとつのプロジェクトに取り組めるんですね。
これからも、一人ひとりとのつながりを大切に、ていねいに積み上げていけたらいいなと思っています。

オズモール読者の皆さんにも、まずは”ワンタイム”サポーターとして、ぜひ気軽に参加していただけたら嬉しいです!」




【今すぐ出会える、東北の素敵な人々&プロジェクト】Googleイノベーション東北

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現在、気軽に参加できる「ワンタイム」サポートとしては、福島の漆器「楽膳」のFacebookシェア拡散、今週末11/11-12開催、大分・熊本での音楽イベント「OK MUSIC CARAVAN」の広報サポーター、九州大学箱崎跡地の歴史的建築群活用アイディアなどが進行中。その他詳しくは下記HPをチェックして。

※イノベーション東北や松岡さんの活動は「Googleの決断思考」(著:林信行+山路達也)で触れられているほか、NHK「東北発☆未来塾」でも放映予定。

WRITING/MINORI KASAI PHOTO/TOMOYA UEHARA

※記事は2016年11月9日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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