華やかな世紀末芸術の軌跡。六本木の国立新美術館で「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」

ウィーン・モダン展@国立新美術館  PC

19世紀末から20世紀初頭のウィーンでは、絵画や建築、デザインなど幅広い分野で独自の華やかな文化が開花して「世紀末芸術」の黄金時代を迎える。2019年4月24日(水)から8月5日(月)まで、六本木の国立新美術館で開催される「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」は、当時の文化を「近代化(モダニズム)への過程」という視点から読み解く新しい試みの展覧会。芸術の都を彩った、豊かな文化を堪能しよう。

更新日:2019/04/01

ウィーン・モダン展@国立新美術館《幼いヨーゼフ2世を伴ったマリア・テレジア》
左/マルティン・ファン・メイテンス《マリア・テレジア》(額の装飾画:幼いヨーゼフ2世)1744年 油彩/カンヴァス 216.2×162.5cm ウィーン・ミュージアム蔵 (C)Wien Museum / Foto Peter Kainz 右/ダゴベルト・ペッヒェ《ティーセット》製作:ウィーン工房 1922-23年頃 象牙、エンボス加工された銀 ティーポット: 19.9×27.4×16.2 cm ウィーン・ミュージアム蔵 (C)Wien Museum / Foto Peter Kainz

絵画や建築などウィーンの芸術文化の全容が分かる総合展示

今回は、100万点におよぶ所蔵品でウィーンの歴史や文化を今に伝えるウィーン・ミュージアムから、主要作品が集結。これに個人所有の名品を加えて、約400点を展示する。その内容は絵画だけでなく、建築、デザイン、ファッションと幅広く、ウィーンの芸術文化の全容が分かる総合展に。

展覧会では、18世紀中頃まで時代をさかのぼり、ウィーンの世紀末文化が花開くまでの歴史的な背景にもスポットライトを当てる。1740年代から1790年代にかけて、女帝マリア・テレジアとその息子・ヨーゼフ2世が統治したハプスブルク帝国の首都ウィーンでは政治や経済などでさまざまな社会改革が行われたという。

新しい社会の気風は自由な精神を持つ知識人たちを魅了し、彼らが交流することでウィーンはヨーロッパ文化の中心地へ。ここから、19世紀の世紀末芸術への歩みが始まる。

ウィーン・モダン展@国立新美術館 《3つの最も嬉しいもの》
フリードリヒ・フォン・アメリング《3つの最も嬉しいもの》1838年 油彩/カンヴァス 80×80cm ウィーン・ミュージアム蔵 (C)Wien Museum / Foto Peter Kainz

日常生活に美しさを求めたビーダーマイアー時代の作品も

ナポレオン戦争終結後の1814年、各国の指導者が集まったウィーン会議では(ナポレオンによって混乱していた)国境や国家の体制などを整理してヨーロッパの地図を再編。それ以降、1848年にヨーロッパ各地で革命が起きるまでの期間を「ビーダーマイアー」時代と呼ぶ。当初は家具の様式をさす言葉だったけれど、いつしか生活様式など全体を表すようになったとか。

この時代は急激な都市化が進み、政治的な締め付けが強かった反動で、人々の関心が「私的な領域」へと向けられたそう。何しろ、あらゆる作品に対して検閲が行われるという環境なので、表現の自由はかなり制限されたみたい。そんな中で、画家たちが日常生活やのどかな風景をテーマに選んだのも肯ける。

こうして、日常生活の中に実用的な美しさを見い出したビーダーマイアー様式は、後にモダニズムの一つのモデルとして発展することに。

ウィーン・モダン展@国立新美術館《皇后エリーザベト》+《ドーラ・フルニエ=ガビロン》
左/フランツ・ルス(父)《皇后エリーザベト》1855年 油彩/カンヴァス 81.5×58 cm ウィーン・ミュージアム蔵 (C)Wien Museum / Foto Peter Kainz 右/ハンス・マカルト《ドーラ・フルニエ=ガビロン》1879-80年頃 油彩/板 145×93.5 cm ウィーン・ミュージアム蔵(C)Wien Museum / Foto Peter Kainz

近代的な大都市となったウィーンを象徴するリンク通り

皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の治世(1848年~1916年)の間にウィーンは近代的な都へと変貌し、人口は50万人から220万人に増加。この変化は、1857年に皇帝が城壁の取り壊しを命じて、新しいウィーンの大動脈となる「リンク通り(リンクシュトラーセ)」を開通させたことに始まる。

リンク通りは19世紀のウィーンの象徴で、現在でも「世界で最も美しい大通り」として知られている名所。沿道には、重厚な古典主義様式の国会議事堂や装飾性の高いゴシック様式の教会などが立ち並び、緑豊かな公園もある。

1879年には、画家のハンス・マカルトの演出で、皇帝夫妻の銀婚式を記念する祝賀パレードも開催。そのときの様子はマカルト自身の描いたデザイン画に残っていて、盛大なイベントであったことが作品からも伝わってくる。

ウィーン・モダン展@国立新美術館 エゴン・シーレ《自画像》
エゴン・シーレ《自画像》1911年 油彩/板 27.5 x 34 cm ウィーン・ミュージアム蔵(C)Wien Museum / Foto Peter Kainz

クリムト、シーレなどウィーン世紀末の巨匠の傑作が一堂に

19世紀末から20世紀初頭にかけて、ウィーンでは路面電車や地下鉄などの公共交通機関も発達して、ますます都市の機能が充実。

絵画では、1897年にグスタフ・クリムト率いる若い画家グループがオーストリア造形芸術家組合(ウィーン分離派)を結成したり、1903年に工芸美術学校出身の芸術家たちを中心に「ウィーン工房」が設立されたり。こうして、多くの芸術家の活躍できる環境が整っていったことも、世紀末芸術が花開く下地になっていたのかも。

今回は、クリムトの作品が47点、エゴン・シーレが22点、オスカー・ココシュカ17点と、それぞれに同時代を生きて交流もあったとされる世紀末のウィーンを代表する巨匠たちの傑作を一挙に紹介。この時期に、モダニズムの黄金時代を築いた作家たちの作品世界を堪能できる。

また、絵画だけでなく、建築模型や当時のドレスなど多彩な展示品があるので、ウィーンという都市の歴史を背景にして生まれた世紀末芸術の時代の風を感じ取って。

ウィーン・モダン展@国立新美術館 関連イベント
左/演劇「エミーリエ・フレーゲ 愛されたミューズ」5月17日(金) 右上/「久元祐子・ピアノコンサート」4月27日(土) 右下/「小林沙羅・歌曲コンサート『ウィーン音楽の夕べ』」5月2日(木)

音楽の都・ウィーンにちなんだ関連イベントも盛りだくさん

会期中は国立新美術館1階ロビーで、“音楽の都”ウィーンにちなんだ関連イベントなどを多数開催。参加は無料なので、展覧会の予定に楽しみをプラスするのもいいかも。

特にゴールデンウィークは、4月26日(金)に“天使の歌声”で知られるウィーン少年合唱団の「ミニトーク&コンサート」、27日(土)は日本で唯一ベーゼンドルファー・アーティストの称号を持つ久元祐子さんの「ピアノコンサート」、5月2日(木)は新進気鋭のソプラノ歌手・小林沙羅さんによる歌曲コンサート「ウィーン音楽の夕べ」、5月3日(金)はウィーン在住のピアニスト山口友由実さんの「ピアノコンサート」など盛りだくさん。

展覧会開始から5月6日(月・祝)までは、ウィーンの至宝として有名なベーゼンドルファーピアノに、クリムトの代表作をペインティングした世界で25台限定の貴重なモデルも公開される。

また、5月17日(金)には、オーストリアの女優マクシ・ブラーハさんが「クリムト最愛の女性、エミーリエ・フレーゲ」を演じる一人芝居の公演もあり、こちらは展覧会の観覧券(半券可)があれば無料で参加できる(定員260名、先着順)。展覧会とともに、さまざまな形でウィーンの世紀末芸術を体感しよう。

日本・オーストリア外交樹立150周年記念 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 ポスター画像

イベントDATA

イベント名
ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道
開催場所
国立新美術館 企画展示室1E
会期
2019/4/24(水)~8/5(月)
開館時間
10:00~18:00
※毎週金・土曜は、4・5・6月は20:00まで、7・8月は21:00まで
※4/28(日)~5/2(木)、5/5(日)は20:00まで
※5/25(土)は「六本木アートナイト2019」開催に伴い、22:00まで開館
※入場は閉館の30分前まで
休館日
毎週火曜休館
※ただし4/30(火)は開館
観覧料(前売)
一般1600円(1400円)、大学生1200円(1000円)、高校生800円(600円)、中学生以下無料
関連イベント
4/26(金)18:45開演「ウィーン少年合唱団 ミニトーク&コンサート」トーク&演奏時間 約25分
4/27(土)18:00開演「久元祐子・ピアノコンサート」公演時間 約60分
5/2(木)18:00開演「小林沙羅・歌曲コンサート『ウィーン音楽の夕べ』」公演時間 約60分
5/3(金)18:00開演「山口友由実・ピアノコンサート」公演時間 約60分
※上記はいずれも国立新美術館1階ロビーで開催、無料

5/17(金)18:00開演「エミーリエ・フレーゲ 愛されたミューズ」上演時間 約60分
会場:国立新美術館3階講堂
定員:260名(先着順)
※参加無料、ただし本展の観覧券(半券可)の提示が必要
ホームページ
ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 展覧会ホームページ

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