ギュスターヴ・モロー展@パナソニック汐留美術館《24歳の自画像》+《一角獣》 PC
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多彩な女性像が一堂に!パナソニック汐留美術館で「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」

更新日:2019/04/15

象徴主義を代表する19世紀の画家、ギュスターヴ・モロー。新橋のパナソニック汐留美術館では2019年4月6日(土)から6月23日(日)まで、モローが女性をテーマに描いた作品を集めて「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」を開催。最愛の恋人や母親から、歴史や文学を彩る女性まで、彼の現実と幻想の世界に登場する女性たちの多彩な作品が一堂に集結。「女性像」という新たな切り口で、モロー芸術の魅力を堪能して。

ギュスターヴ・モロー展@パナソニック汐留美術館《アレクサンドリーヌ》+《バルクと死の天使》
《アレクサンドリーヌ》 インク・鉛筆/紙 22.5×16.7cm ギュスターヴ・ モロ一美術館蔵 Photo(C)RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF 

最愛の母や恋人との愛情深い交流を伝える素描なども展示

展覧会では、パリの国立ギュスターヴ・モロー美術館の全面協力を得て、数々の名作を一挙に公開。初来日作品を含む、油彩、水彩、素描など約70点が展示される。

第1章「モローが愛した女たち」では、モローにとって「世界で一番大切な存在」だった母ポーリーヌや、最愛の恋人アレクサンドリーヌ・デュルーとの関係に注目。モローは58歳で母親を亡くすまで共に暮らしていて、母親の素描や肖像も数多く残している。

また、30年近くも寄り添い続けた恋人アレクサンドリーヌの素描も多く、画面からは画家の深い愛情が感じられる。《パルクと死の天使》は、彼女を亡くして深い悲しみにあった時の作品。神話や聖書を題材にドラマチックな女性像を多く描いているモローだけど、実生活では穏やかで愛情あふれる女性たちと過ごしていたみたい。

ギュスターヴ・モロー展@パナソニック汐留美術館《出現》+《踊るサロメ(刺青のサロメ)のための習作》
《出現》  1876年頃 油彩/カンヴァス 142×103cm ギュスターヴ・ モロ一美術館蔵 Photo (C)RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF 

美しく残忍なサロメのイメージを決定づけた代表作《出現》

モローの代表作《出現》は、19世紀末の芸術家たちに大きなインパクトと多大なインスピレーションを与えたという。第2章では、この傑作を核に「《出現》とサロメ」と題して、この作品のモチーフとなった女性・サロメに迫る。

作品に描かれているのは、ユダヤのヘロデ王の前で踊ったサロメが、その褒美に何が欲しいかと聞かれて洗礼者ヨハネの首を所望したという新約聖書の有名なワンシーン。モローは、ヨハネの首の幻影が現れるという独自の発想でこのエピソードを描き、絵の中にはさまざまな時代・地域の建築様式や文様を取り込んでいる。

さらに注目すべきなのは、この作品から、サロメが美しさと残忍さを併せ持つファム・ファタル(宿命の女)としてのイメージを決定付けられたこと。これまでにない発想が、世紀末の芸術家たちの心を震わせたのだろう。

ギュスターヴ・モロー展@パナソニック汐留美術館《エウロペの誘拐》+《ヘラクレスとオンファレ》
《エウロペの誘拐》 1868年 油彩/カンヴァス 175×130cm ギュスターヴ・ モロ一美術館蔵 Photo (C)RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF 

誘惑したり奪われたり。それぞれの宿命を背負った女たちも

サロメ以外にも、モローは男性を誘惑して振り回すファム・ファタルとしての女性を数多く描く一方で、男性から誘惑されて数奇な運命をたどることになった女性も描いている。第3章「宿命の女たち」には、そんな女たちを描いた作品が並ぶ。

例えば《エウロペの誘拐》は、古代ローマの詩人オウィディウスによる『変身物語』の一場面で、フェニキアの美しい王女エウロペに恋をしたオリンポスの主神ユピテルが牡牛に変身して近づき、油断した王女をさらってしまう瞬間を描いた作品。

このほかにも、古代ギリシアの英雄ヘラクレスが殺人の罰としてリュディアの王女オンファレの奴隷となった作品《ヘラクレスとオンファレ》などの作品を展示。ドラマティックなイメージのうちに、モローは女性の持つ複雑で多面的な姿を浮き彫りにする。

ギュスターヴ・モロー展@パナソニック汐留美術館《一角獣》2種類
《一角獣》 1885年頃 油彩/カンヴァス 115×90cm ギュスターヴ・ モロ一美術館蔵 Photo(C)RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMFギュスターヴ・ モロ一美術館蔵

清らかな純潔の乙女だけに従う幻の動物・一角獣もモチーフ

第4章は「《一角獣》と純潔の乙女」。《一角獣》は貞節の象徴とされていて、純潔の乙女にだけは従順になるという幻の動物。モロー作品の中では、美しくたおやかな女性に抱かれるユニコーンの姿が見られる。

モローが一角獣のモチーフに取り組み始めたのは、1883年頃。現在パリのクリュニー中世美術館に所蔵されているタピストリー《貴婦人と一角獣》が一般公開された年で、この作品に刺激を受けて創作を始めたと言われる。

作品に登場する汚れなき女性のイメージは、男性にとっての憧れ。でも、その清らかさや魅力ゆえに人生を狂わせることもあるため、これもモローにとってはファム・ファタルだったよう。

産業や娯楽が急速に発展した19世紀のパリで、生涯独身を通し、ひとりアトリエにこもって聖書や神話をモチーフにした歴史画を描き続けたモロー。幻想的な内面世界に自分の真実を追い求めた画家の、独特な女性像を楽しんで。

ギュスターヴ・モロー展@パナソニック汐留美術館 オリジナルグッズ(仮)
オリジナルグッズ「ポストカード」各120円

オリジナルグッズでお気に入りのモロー作品をお土産に

会期中は、ミュージアムショップで展覧会のオリジナルグッズも販売する。出店作品をモチーフとするアイテムには、定番の「ポストカード」(120円)はもちろん、小さな額絵のような「アクリルマグネット」(650円)やポストカードと同じくらいの使いやすい「A6ノート」(500円)などが揃う。

また、展覧会の図録と同じ素描作品「雲の上を歩く翼のあるアレクサンドリーヌ・デュルーとギュスターヴ・モロー」がデザインされた「図録トート」(850円)も、ここでしか買えない限定品。モローの描いたさまざまな女性像を堪能した後は、オリジナルグッズでお気に入りの一枚を手に入れよう。

ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち ポスター画像

イベントDATA

イベント名
ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち
開催場所
パナソニック 汐留美術館
会期
2019/4/6(土)?6/23(日)
開館時間
10:00~18:00(入館は17:30まで)
※5/10(金)と6/7(金)は20:00まで(入館は19:30まで)
休館日
水曜(ただし、5/1、6/5、12、19は開館)
入館料
一般1000円、65歳以上900円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料
※5/18(土)国際博物館の日はすべての方が入館無料
ホームページ
ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち

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※記事は2019年4月15日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります