北欧の知られざる大型作家を紹介!東京ステーションギャラリーで「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展

ルート・ブリュック展@東京ステーション PC

北欧・フィンランドを代表するアーティスト、ルート・ブリュック。名窯アラビアの専属として約50年にわたって活躍した多彩な仕事を紹介する展覧会「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」が、2019年4月27日(土)から6月16日(日)まで東京ステーションギャラリーで開催される。タイトルは、蝶の陶板シリーズを境に作風が変化したことなどにちなんで名付けられたそう。知られざる大型作家による北欧アート、日本初の大規模展を堪能して。

更新日:2019/05/20

ルート・ブリュック展@東京ステーション 《結婚式》
《結婚式》1944年、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art(C)KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531

初期の愛らしい作品から後期の迫力ある壁画まで約200点

ルート・ブリュック(1916~1999年)は、1942年からフィンランドの名窯であるアラビア製陶所・美術部門の専属アーティストとして活動をスタート。版画の技法を応用した独自の技術などを開発して、1951年のミラノ・トリエンナーレではグランプリを受賞している。市庁舎や大統領邸の大型インスタレーションを手がけるなど、フィンランドを代表するアーティストのひとり。

初期の果物や鳥などを描いた愛らしい陶板の作品から、後期の膨大なピースを組み合わせた迫力たっぷりのモザイク状の作品まで、展覧会では約200点のセラミックやテキスタイル作品を展示。重厚でエレガントな釉薬の輝きと、繊細な図柄やフォルムは今も変わらぬ魅力を放っている。

初期の頃に制作した《結婚式》は、ロマンティックで詩情あふれる世界観があふれている。この頃、後に夫となるデザイナーで彫刻家のタピオ・ヴィルカラと出会ったブリュックの、結婚への憧れも見えるよう。

ルート・ブリュック展@東京ステーション《ライオンに化けたロバ》
《ライオンに化けたロバ》1957年、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art(C)KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531

確かな技法と優しい表情が人気の《ライオンに化けたロバ》

1957年に制作された作品《ライオンに化けたロバ》は、2016年にフィンランドやスウェーデンを巡回した生誕100周年記念展でもメインのビジュアルに採用された人気の高い作品。こちらは、1950年代にブリュックが確立した成形技法の集大成とも言えるもので、伝統技術に支えられた新しい技法が生きている。

ライオンは権威や父性の象徴。そんなライオンも、ブリュックの手にかかれば、たてがみは美しいブルーのタイルに覆われ、足元にはかわいらしい草花があしらわれて愛すべきキャラクターに。

作品タイトルは有名なイソップ童話「ライオンに化けたロバ」にちなんで名付けられたもので、よく見るとライオンのお腹のあたりにロバがひそんでいるのが分かる。「夫(タピオ・ヴィルカラ)のポートレートかも?」との説もあるそうだけど、その人間らしい表情には心惹かれる。

ルート・ブリュック展@東京ステーション《蝶たち》《黄金の深淵》
左/《蝶たち》1957年、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art(C)KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531 右/《黄金の深淵》1969年、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art(C)KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531

蝶の陶板が転機となりモジュールを組み合わせた大型作品へ

1957年に、ブリュックは独自の成形技法を使って「蝶」の陶板を数多く制作している。蝶は、昆虫の研究者だった父との思い出の象徴であり、第二次世界大戦後のフィンランドで自由のシンボルでもあったという、彼女の大切なモチーフ。今回の展覧会でも、壁一面に羽ばたくブリュックの蝶たちの群れを鑑賞することが出来る。

この頃を境に、彼女の作風は小さなモジュール(構成要素)を組み合わせて、自然をテーマにした大型作品を作る方向に変わっていく。サナギから羽化して美しい羽を広げ、花から花へと自由にはばたく蝶の姿は、どこか彼女自身の自由さに似ているかもしれない。

1960年代の後半になると、ブリュックは小さなタイルでさまざまな色調のモザイクレリーフを作るようになるけれど、そのひとつが金彩を使ったシリーズで、特に《黄金の深淵》は異彩を放つ存在感にあふれている。

ルート・ブリュック展@東京ステーション《スイスタモ》
《スイスタモ》(部分)1969年、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art(C)KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531

タイルピースを使った抽象的な作品群や、特別な映像展示も

その後、ブリュックは小さなタイルピースを使った抽象的な表現に挑戦。こうした後期作品も展示されるので、ひとつひとつのピースの凹凸が生み出す陰影や、鮮やかな釉薬のグラデーションに注目を。

こちらの作品タイトル「スイスタモ(Suistamo)」というのは、1944年に旧ソ連領となるまで、フィンランドの国土だった地方の地名。ここには古くから伝わる詩歌や、伝統的な生活などがあり、フィンランドの人びとにとって心の故郷のような場所だそう。 ブリュックも両親に連れられて、この地をたびたび訪れていたという。

会場では、ブリュックの世界をより深く体感するための、特別なドキュメンタリー映像なども上映される。彼女の生い立ちと人生、主要な作品の説明などとともに、そのクリエイションの源となった美しい北欧の風景も見られるので、「まだ知らないフィンランド」を堪能できるはず。

ルート・ブリュック展@東京ステーション バッグ
バッグ 1柄 3色(ナチュラル、ライトグレー、パステルミント)1944円

展覧会グッズも充実。一部の撮影可能な展示空間も楽しみ

また、2019年は日本とフィンランドの国交樹立100周年の年で、ブリュックの没後20年でもあるとか。そこで、ルート・ブリュック日本初の大規模展を記念して、約50年におよぶキャリアの代表作を網羅した決定版の展覧会図録『ルート・ブリュック蝶の軌跡』(3240円)も発売。

このほかにミュージアムショップでは、《ライオンに化けたロバ》をモチーフに、ナチュラル、ライトグレー、パステルミントの3色が揃う「バッグ 」(1944円)や「iPhone Case」(3780円)など、展覧会のオリジナルグッズも充実している。

3階展示室では撮影が可能なので、色彩豊かな作品を思い出に残すこともできるのが嬉しい。ブリュックについては「はじめまして」の人も、北欧好きな人も、北欧・フィンランドが誇るアーティストの多彩な仕事を、この機会にじっくり堪能しよう。

ルート・ブリュック展@東京ステーション ポスター画像

イベントDATA

イベント名
ルート・ブリュック 蝶の軌跡
開催場所
東京ステーションギャラリー
会期
2019/4/27(土)~6/16(日)
開館時間
10:00~18:00
※金曜は20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休館日
月曜日(6/10は開館)
入館料
一般 1100円、高校・大学生 900円、中学生以下無料
ホームページ
ルート・ブリュック 蝶の軌跡 公式サイト

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