

Q大人になってから、かつての仲間たちとなにかをする・・・ということは、なつかしさもあり、また新鮮さもあって、とても魅力的なことだと思います。谷村先生ご自身もそのような経験があるのでしょうか?
A今回、この小説を書いていて気づいたのですが、1からなにかを始めるよりも、もう一度同じなにかをする方が、もしかしたら、ずっと多くのエネルギーがいるのかもしれません。1から友達になるときよりも、一度こじれた関わりを取り戻すときの方が、ずっと大変なんだと思います。でもやっぱり、もう一度なにかがしたい! 『空しか、見えない』では、10年前の仲間たちと、同じ房総半島の海で遠泳をすると決めるのですけれど、そこには、忘れられないほどの経験の輝きがありました。私自身には残念ながら、それほどの経験はないのです。遠泳も、一度もしたことがなかった。だから、今回の小説にいろいろいただいた感想の中で、いちばん自分自身の心境にも近かったのが、こういう経験のある仲間たちが羨ましかった、というひと言でした。でも、今からだって遅くはないのですから、忘れられない経験(遠泳だっていいと思います)をしてみてはいかがですか?
Qここ最近、FacebookやTwitterなどのSNSの影響で、中学、高校、大学など同級生と再び出会うということをよく聞きます。そんな中、気になっていた同級生や昔の恋人と再会し、復縁したり、付き合いたいと思う人も多いようです。実際に、オズモールの読者もそういった経験アリの方が多々いるようなので、そんな女子たちにアドバイスをいただければ・・・。
A昔の友人たちや恋人と会うときには、はじめにひとつの覚悟があった方がいいのでしょうね。共通の思い出には、実は温度差があるということへの自覚です。必ずしも、共有はできていないのです。だから、ある人にとっては今も大切な思い出だけど、別の人にとってはあまり意味を持っていない思い出になっているかもしれない。さらには、相手は自分のことをまるで覚えていなかったり、その逆もあると思います。そういうことに、いちいち傷つかないこと、だと思います。もしも自分の方がよく覚えているのなら、よく覚えている人の持っている静かな情熱、内側にある細やかさを、自分の魅力として自覚してよいのだと思います。逆に相手が覚えていてくれたなら、そこを褒めてあげるところから、楽しい時間は始まりそうですね。よく覚えている人や自分を、退屈でつまらない人だなんて思わないことだと思います。私自身は、ある時期まで同窓会は苦手でした。昔の男・・・復縁というのも、考えたことがなかった。粗雑なところがありますから。でも、私の年齢になると、復縁で結婚する人、離婚した相手と再婚する人までいます。見ていると、案外微笑ましい関係です。多分どちらかが、ずっと好きだったのでしょうね。今回の小説の主人公も、ずっと同じ相手を好きでいます。離れていた間も、ずっと好きでした。恋は成就するのか、見てあげてください。
Qオズモール読者に向けて、ここに注目して読んで欲しいというメッセージがあれば教えてください!
A25歳になった仲間たちが、15歳のときに泳いだ海で、また泳ごうと約束するところから、物語は動き始めます。だけど、みんな25歳にもなっていると、いろいろな事情が出てくるわけです。そのいろいろな事情が、皆さんの毎日とどこか重なるかもしれません。大変な毎日に大変な約束をするので、仲間たちの毎日はそれぞれ変わっていきます。本当だったらいつもと同じ夏だったのかもしれないのに、1人が言い出し、皆が賛同したことで、違う毎日が始まります。ありふれたように感じられる毎日を、もし少しでも変えたくなるときがあったら、ぜひこの小説を読んでみてください。励まし合える仲間たちに、きっと出会ってもらえると思います。 |