ツラいとき、誰かの愛を信じられないとき、本に救われた経験はないだろうか? 言葉にならない気持ちを作者が文字にし、もやもやしていた心にピントが合う。夏樹は好きでもない男性たちと体を重ねた過去を持つ27歳の書店員。光治は崩壊した家庭で育った愛を知らない17歳の高校生。「本」だけを心の支えに生きてきた2人が出会い、お互いを自然に「助けたい」と思っていく。「時効警察」などの脚本を手がけた山田あかねが自身の原作小説を映画化。もがくことをやめたら楽になれるかもしれない。でも、それが「あなたの物語」でいいの? 心の方向音痴になっている人なら、なにかを感じとることができるはず。
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誰と恋していてもなぜか寂しい。埋めようとするほどに深まる家族の溝。解決方法が見えない孤独を感じている夏樹と光治を演じるのは、佐藤江梨子さんと柳楽優弥さん。お2人は、そんな「思うように物ごとが進まないとき」は、どんな風に考えるようにしている?
柳楽:僕は、例えばタクシーに乗ったとき、運転手さんの態度がすごく悪くても、「こういう人間もいるんだろうな」って意外と怒らずにいられるタイプ。映画って変わった人が出てくることが多いんで、そういう人に会った経験で得られるものもあると思うし。あまりにひどかったら怒ることもあるけど、我慢するのもイヤじゃないです。
佐藤:私の場合、例えですけど、空に唾吐いて、唾が返ってくることがよくあるんですよ(笑)。でも最近は、そういうことより、ちっちゃなことに幸せを感じるようにしてます。昔はもっと派手な格好や派手なこともしたけれど、今は普通に電車も乗るし、お店にも入るし、日常生活を普通に送ることが幸せだなと思います。
夏樹と光治は、「本」を通して姉と弟、友達や恋人ともまた違う絆でつながっていく。お2人は、人ではない「なにか」に自分を救ってもらった経験はあるのだろうか?
佐藤:それこそ「本」ですね。失恋したときとか、バカみたいに本を読んでいた気がします。恋愛小説でもなんでも読みたいと思う本をとにかく読む。言葉や本の持つ重みを感じるうちに、救われていくんでしょうかね。それ以外でも、これまで何度も読んだのは谷川俊太郎さんの本。詩集の『はだか』とか。
柳楽:僕はいつも友達とか家族に救われてると思いますが、人以外なら「映画」ですね。好きな映画は『アモーレス・ペロス』。メキシコに超行ってみたかったし、撮り方がすごいと思う。あとは、小学生以来、久しぶりに『メン・イン・ブラック』を見たら、ウィル・スミスってやっぱりすごいな!って思いました(笑)。
佐藤さんは、9歳年下の柳楽さんの答えに「MIBの頃って、小学生だったんだね」としみじみ。インタビューの1週間前に、柳楽さんはタレントの豊田エリーさんと入籍したばかり。佐藤さんは「まさか先を越されるとは」と笑いながらも、「私も結婚はするときはしますよ。でも今はまだダンナにも出会ってないですから(笑)」と自身の結婚について話していた。
最後に、この作品の大きいテーマである「愛」とは?
佐藤:愛のわかる人のほうが少ないですよねきっと。でも、いつもは3秒で寝られるのに、ごくたまに、悲しかったり、寂しかったり、極度に緊張して眠れないときがあって、子供の頃はお母さんが手をずっと握っててくれたんですね。それを母に電話で話したら、「会って抱きしめて、頭撫でであげたい」って。そういう気持ちなんじゃないでしょうかね。
柳楽:僕も愛はわかりません。結婚はしましたけど、そこまでそういう話を2人でしたこともないし。でも、一緒にいて、普通に幸せでいられるなら、それは愛し合っていることなんだと思うし、そういうことなのかな・・・。
佐藤江梨子 PROFILE
1981年、東京都出身。2003年、『プレイガール』で映画初主演し、以降、ドラマ、CM、映画、舞台と多方面で活躍中。作家としても活動し、昨年には石田衣良、唯川恵とのリレー小説『TROIS トロワ』を出版
柳楽優弥 PROFILE
1990年、東京都出身。映画『誰も知らない』に14歳の時に初主演し、カンヌ国際映画祭で日本人初&史上最年少で最優秀男優賞を受賞。主演作に『星になった少年』など。2008年に初の小説『止まらない雨』を出版
書店員の夏樹がセレクトした本を集めた「愛のわからない人へ」の棚は人気を呼んでいる。しかし、夏樹自身も、お金と引き替えに多くの男性と体を重ねた過去を持つ、愛がなにかわからない人間の1人だった。ある日、中年の女性客が万引き事件を起こす。しかし、呼び止めると、女性のかばんの中は空だった。女性の夫は慰謝料をよこせと激怒するが、後日、店に息子の光治が来て「母の万引きは癖だからもう謝らなくていい」と言うのだった・・・。
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取材・文/安田佑子 撮影/米山典子
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