profile
市川右近(歌舞伎俳優・演出家)
1963年、日本舞踊家元の長男として生まれる。1975年、市川猿之助の部屋子となり、市川右近を名乗る。1986年、猿之助創演のスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』の従者・ヘタルベ役で注目を浴び、以降数々の大役をこなす。歌舞伎以外にも能楽堂シェークスピアシリーズ『マクベス』の主演ほか、ミュージカル、オペラや舞台演出など多方面で活躍中。
松竹大歌舞伎全国巡業 7月1日〜31日
青山円形劇場「シラノ・ド・ベルジュラック」 8月30日〜9月9日
三越歌舞伎「傾城反魂香」 10月6日〜26日 |
|
|
|
|
市川右近
(歌舞伎俳優・演出家)
朗読、舞台、歌舞伎、オーケストラ・・・。並んだ言葉を眺めるほど、むずかしそうに感じる“リーディング・スペクタクル”。その実態はどんなものなのか、どんなふうに楽しめばいいのかを、演出、主演を務める市川右近さんに伺った。
「通常、音声だけで楽しむ朗読劇の舞台化です。照明、映像、音響などが加わった、まったく新しい形態の芸術。今年で7年目ですが、試行錯誤の連続でした。気付いたのは、回を重ねるごとに出演者が動かなくなってきていますよね」
朗読劇の性質上、立つ、座る、控えめな身振りや目線など、もともと所作は限られたものだが、それでもさらに演者のスタイルはより“静”へと向かっているという。
「というのは、お客様の想像力ってすごいんです! 舞台をご覧になりながら、それぞれの風景を頭の中に思い描いていらっしゃる。舞台装置があり、衣装があり、役者のアクションがあるお芝居よりも、お客様がイマジネーションをフル回転させて楽しんで下さるんです。そのイマジネーションを引き出す僕らは、動くこと(芝居)では与えられないインスピレーションを提示するのが役目なんじゃないかと。僕はよく“目を閉じてご覧下さい”っていうんです。どうしていいかわかんないでしょ(笑)。でも、ときに目を閉じてご自身の内にある情景を見つめていただきたい。僕らとお客様の頭でスペクタクルを作り出すんです」
想像力をインスパイアするのにひと役買っているのが、歌舞伎俳優の起用だという。
「男が女を演じる“女形”は、歌舞伎の重要な演出のひとつ。でも歌舞伎の場合、着物があり、化粧があります。リーディング・スペクタクルにはそれもありませんから、春猿も初めは悩んだようです。奇異なものに見えるんじゃないか、とかね(笑)。でも女性以上に女性を演じるのに長けているのが女形ですから。妖艶さや優雅さを十分に感じてもらえるはずです」
では、 7 回目を迎える今年の見どころは?
「『下町日和〜人情編〜』は、去年に引き続き中村中さんに歌をお願いしています。彼女は歌担当ではなく、共演者というスタンスで稽古から付き合ってくださる。そんな姿勢も、歌の表現力も素晴らしいのでぜひ楽しみにして下さい。そして『ミッシング・ピース』は、リーディング・スペクタクルの初演となった思い入れの深い作品で、これを歌舞伎俳優でやってみたい、と。何度か読み合わせをしたのですが、まるでいつか歌舞伎俳優で演じることを予想されて書かれた話かのようにしっくりきましたよ(笑)。期待して下さい。オーケストラが奏でる千住明さんの音楽も迫力満点です。またソロヴァイオリンには、この夏デビューする宮本笑里さんにご出演いただきます」
話を伺うほどに、興味がわいてくるリーディング・スペクタクル。今回は歌舞伎座からもほど近い「ル テアトル銀座」で上演される。では、銀座のことならおまかせの右近さんがオススメする、鑑賞後に立ち寄りたいスポットは・・・?
「僕が銀座で気に入っているのは、歌舞伎座のすぐ近くにある“珈琲&YOU”というお店。オムライスが人気のお店なんだけど、オムレツサンドっていうサンドイッチがあって、それがうまいんですよ。ふつうのタマゴサンドじゃなくってオムレツをサンドしているやつね。テイクアウトもできるから、ぜひ召し上がってみて下さい」
|
|
|