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どうにもならないとき、あの頃はただ自分を壊すことしかできなかった。すべてを壊したら、その先にはなにかがある・・・「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」は、そう信じた3人の若い男女のロードムービー。施設で育ち、茨城の工事現場で働くケンタとジュン。先輩にイジメられながらも現状を抜け出すことができずにいるケンタ。ケンタを兄のように慕いながらも、いつも自分の欲求のままに動いてしまうジュン。ある日、2人がナンパしたブスな女の子カヨ。カヨは、ただ愛されたくて誰とでもベッドをともにしていた。そんな3人が、すべてを放り投げて北海道へ。日本の「北の果て」に向かう3人の、このやりきれない「感情の果て」。そこにはなにが待ち受けるのか・・・。
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好きじゃない仕事、給料から月5万円もの金を奪っていく先輩、そして自分をナンパに誘ってくれるジュン。それが今の「ケンタの国」。演じるのは松田翔太(24)。松田と言えば、40歳の若さでこの世を去った俳優の故・松田優作の次男で、母に女優の松田美由紀、俳優の松田龍平を兄に持つが、カヨを演じる安藤サクラ(24)は、父に俳優の奥田瑛二、エッセイストの安藤和津を母に持つ。安藤は今作で「アジア・フィルム・アワード」の助演女優賞にノミネート。さらに、今作には柄本明&佑父子がケンタとジュンの職場の先輩と友人・洋輔役で出演。そしてケンタの兄カズ役を、女優・宮崎あおいの兄、宮崎将が静かに、かつ圧倒的な迫力で演じる。
両親は誰かわからず、施設で育ったジュン。仕事や進学に対してはぼんやりとした思いしかなく、積極的にすることと言えばナンパくらい。彼の中で確かなのは、ケンタのことは信じられるということ。今は、ブスだけどお金をくれて、毎日セックスもさせてくれるカヨの家に出入りする。それが「ジュンの国」。天真爛漫で、どこか危ういジュンを演じるのは高良健吾(22)。ブログでは、ロケ地の仙台で牛たんを堪能したこと、北海道は空気がおいしかったことなどを書いている。去年11月、東京フィルメックス特別招待作品として今作が上映された際の舞台挨拶で「撮影中は寝食をともにし、翔太くんを本当に兄貴のように思っていました」と話した。
エンディングテーマで阿部芙蓉美がささやくように歌う「私たちの望むものは」。この曲は30年前にフォークシンガー、岡林信康が歌った8分近い強烈なメッセージソングのカバー。「私たちの望むものは/生きる苦しみではなく/生きる喜びなのだ・・・あなたを殺すことではなく/あなたと生きることなのだ」から始まるが、思いはそこに留まらない。そして、「私たちの望むものは/生きる喜びではなく/生きる苦しみなのだ・・・あなたと生きることではなく/あなたを殺すことなのだ」と締めくくる。30年前、この複雑で、屈折した感情に、多くの若者が共感した。今作を見終わった後、あなたにこの歌がどう染みるだろうか。
ケンタとジュンはともに施設で育った。2人とも高校には行かず、今は工事現場のビルの壁をドリルで壊す仕事をしている。ケンタは先輩の祐也から理不尽なイジメを受け続けている。ケンタの兄のカズが祐也の腹をナイフで切りつけたため、弟のケンタも目の敵にされ、さらには「賠償金」と称した金を毎月祐也に要求されている。ケンタはジュンに言う。「世の中には2種類の人がいる。人生を自分で選べる人と選べない人。俺たちは・・・選べない人」。
© 2010「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」製作委員会
取材・文/安田佑子
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