ヴュイヤール家がクリスマスプレゼントに欲しいもの。姉は「次男と会わないこと」、次男は「自分の居場所」、次男の恋人は「祝わないクリスマス」、三男の妻は「結婚の真実」、三男は「妻の変わらぬ愛」を、そして母は「病気の完治」、父は「家族の平穏」を願った。C・ドヌーヴ、M・アマルリック、E・デュボスなど、仏映画の名優たちが夢の競演。仏セガール賞に9部門でノミネート、2008年のNYポスト紙「年間ベスト映画10」ではヨーロッパ映画で最高位の4位に。若き名匠A・デプレシャン監督が描く“機能不全家族”のクリスマスは共感と反感の中にユーモアが散りばめられている。家族の悩み、今作のラストが少しだけ癒してくれるかもしれない。
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映画『潜水服は蝶の夢を見る』『007 慰めの報酬』と公開作が続き、日本でもファンを増やしているマチュー・アマルリック。彼が『クリスマス・ストーリー』で演じるのは、トラブルメーカーの次男アンリ。
借金を作る、泥酔したら手がつけられない・・・。とてもじゃないが、アンリが家族にいたら大変! 演じたマチュー本人は、「あそこまで、めちゃくちゃにできるアンリに嫉妬すら覚えるよ」と役を楽しんだよう。今年、六本木で開催されたフランス映画祭に合わせ3度目の来日を果たしたマチュー。デプレシャン監督作品では常連で、「監督は女性の描き方が素晴らしいよ」と話す彼に、『クリスマス・ストーリー』に登場する女性たちについて聞いた。
マチューのお気に入りは、彼が演じたアンリの恋人・フォニア。彼女はクリスマス休暇にアンリの家族と過ごすが、トラブルを楽しんでいるようにすら見える腹の据わった女性。
「僕は彼女のような女性が大好きなんだ。彼女もアンリと同じで退屈が我慢できないタイプだけど、アンリがどんなに彼女や家族を挑発しても、文句も言わず笑っているあたりがすごいよ。だって・・・女性が文句を言うのは世の常だろう(笑)?」
アンリの最大の敵が姉・エリザベート。弟をキラうあまり、母親に骨髄移植のドナーが必要になったときも、アンリの骨髄が母親の体に入るくらいなら自分の息子の骨髄を提供したいと主張する。家族のクリスマスを少しも楽しめない、敏感過ぎる女性。
「エリザベートはいつもネガティブで、自分は好かれてないんじゃないか、悪口を言われてるんじゃないかと思ってる。実はいちばん彼女が自分に近くて、ああいう風にはなりたくないって思ってた。たぶん世の中に彼女のような人たちっていっぱいいるよね」
そして、アンリの弟で三男イヴァンの妻・シルヴィア。一見、いちばんハッピーに見えていた彼女もクリスマスに驚きの行動に出る。
「シルヴィアは自分で夫を選んだと思っていたのに、実はそうではなかったことを知るんだ。彼女はあの行動の後も、イヴァンや子供たちの前でまったく動じない。イヴァンの彼女への態度がまた素晴らしくジェントルマンだろう?」
このシルヴィアの行動には、賛否両論あるだろう。マチューいわく、「フランス人の女性はそうなんだからしかたないよね(笑)。でもイヴァンはあの対応で英雄になったんだ。あれが監督の哲学さ」とのこと。
『クリスマス・ストーリー』の女性たちの生き方でもマチューは、もし最愛の人が同じ行動をとったら、イヴァンのようになれるだろうか?
「僕はね。昔も今もイヴァンタイプなんだよ。好きなら彼女を壊したくないんだ。でもこの性格が問題なんだけどね。人生がややこしくなるよ(笑)」
作品を観れば、マチューがどれだけ女性に寛大かがわかるはず! 自分を貫くフォニア、幸せに完全を求めるエリザベート、愛に正直なシルヴィア。あなたはどのタイプ? 個性豊かなヴュイヤール家の面々。愛情の形は違っても、すべて誰かを愛するがゆえの行動。そんな気持ちでこの映画を楽しみたい。
マチュー・アマルリック PROFILE
1965年、フランス生まれ。デプレシャン監督作品の常連で『キングス&クイーン』ではセザール賞主演男優賞を受賞。『007 慰めの報酬』などハリウッドでも活躍
夫・アベルと妻・ジュノンの長男ジョゼフは、白血病のため6歳で天国に逝った。夫婦も、妹のエリザベートも、ジョゼフのために授かった次男のアンリも骨髄が不一致で移植ができなかったのだ。そんなわけで生まれたときから「役立たず」のアンリは、大人になっても家族の厄介者。借金の肩代わりに姉からは絶縁宣言。その数年後、今度はジュノンに骨髄移植が必要に。それを知った子供たち全員がが久しぶりにクリスマスに集まるが・・・。
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© Jean-Claude Lother/Why Not Productions
取材・文/安田佑子 撮影/キムラミハル
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