かつて「魔都」と呼ばれた上海を舞台に、ハリウッドからはジョン・キューザック、デヴィッド・モース、中国からはコン・リー、チョウ・ユンファ、日本からは渡辺謙、菊地凛子という豪華キャストが集結した愛と陰謀が渦巻く超大作。1941年、太平洋戦争開戦直前の上海。自由と犯罪が共存するその街に住む米国諜報員のポール、中国人実業家のアンソニーと妻のアンナ、日本軍の大佐タナカ、ポールの親友が殺された夜に一緒にいた女・スミコ。欺くために裏の顔を持つ男女たちが恋に落ちたとき、彼らに残された運命は・・・? チェックすべきは美しすぎる45歳のコン・リーが演じる、危険を冒してでも男が愛さずにいられない女・アンナ。謎解きと同時に男子目線でモテ女を分析したい。
愛のために地位と力を利用する男。信念のために愛を利用する女。そんな対照的な男女が描かれた映画『シャンハイ』。今作で渡辺謙さんが演じるタナカは、目的のためなら手段を選ばない日本軍大佐。その冷酷なタナカにも、忘れられない女性の存在が。
「最初はタナカという人物に全然シンパシーが湧かなかったですね。僕は、そんなに去っていく女性を追いかけるタイプではないので(笑)。ただ、理性的で、論理的で、かっちり人生を生きてきた男が、どこかに自分を脱出させたい部分があって、それがその“女性”だったんだと思う。でも自分の立場がそれを許さない。そういうジレンマがタナカを支配してる、と思ったときにちょっとだけシンパシーが湧きました。
彼の謎の部分をあまりに見せないでおくと、単に冷酷な奴としか思われないので、目線のひとつだったり、台詞のトーンのひとつだったり、そういう小さなかぎ針みたいな、チクッとも言わない針をお客さんに刺していきたいと、各シーンで思って演じていましたね」
今作でジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファと、映画ファンにはたまらない実力派俳優たちと共演した渡辺さん。
「今までは僕が欧米人の中に飛び込んで行く感じでしたが、初めてアジアの中に欧米人が飛び込んで来た感じがしたんですよ」と撮影現場の第一印象を語る。
「なかでもリーは『SAYURI』のときに半年くらい一緒に飯も食った仲で、彼女が役に入っていくときの“怖がる感じ”っていうのかな・・・それが僕はとっても好きなんですよね。彼女はあれだけ大きな作品にたくさん出ていながら、役に飛び込んでいくときに、びくびくする感じっていうか、繊細さみたいなものをいまだに持っている。それでカメラの前ではあのパワーですから。すごく尊敬できますね」
コン・リー演じるアンナは、チョウ・ユンファ演じる中国裏社会を牛耳る実業家の妻で、嫉妬深い夫の目を盗み、謎の行動をとっている。危険な香りを持ちながら、男性たちが放っておかないアンナは、渡辺さんから見るとどんな女性?
「近寄りたくない! 怖い(笑)!
みんなヤケドするよってわかってるのに、惹かれずにはいられないんでしょうね。だからドラマになるんですけどね」
地位、名誉、男が欲しいものすべてを持っていそうなタナカが、思いもよらない言葉をポールに投げるシーンがある。
「最後はいつも女が勝つ」。
渡辺さんに聞くと、「それはもう、僕もそう思います」と即答が返ってきた。
「要するに、最終的に本当に弱い生き物なんですよ、男は。だから、争ったら絶対女性に勝てないです。観念、概念、生命力にしても絶対勝てないような気がしますね」
それを聞いた女性記者たちからは、「そう言える渡辺さんが最強ですね」「ケンカしても、どこで謝ったらいいかわかってくれそう」と嬉しい感想のシャワー。これには渡辺さんも困ってしまった様子だった。
「そのコメントには答えにくいなあ・・・
まあケンカはしないってことですよ(笑)」
渡辺謙 PROFILE
1959年、新潟県出身。米映画『ラスト・サムライ』で米アカデミー賞助演男優賞ノミネート、ほか『硫黄島からの手紙』『インセプション』など。また「明日の記憶」「沈まぬ太陽」では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞獲得。『はやぶさ 〜遥かなる帰還〜』来年公開
1941年の上海。英、米、仏、日本がそれぞれの租界を持ち、法と文化が入り乱れていた。アメリカ人のポールは新聞記者という表の顔と、諜報員という裏の顔を持つ。その夜、ポールは同僚の諜報員で親友のコナーとカジノで会う予定だったが、コナーは現れず、謎の中国人美女・アンナと出会う。彼女の後を追って店を出たポールは、彼女の取り巻きに殴られてしまう。そしてポールはコナーが日本女性との情事の後、殺されたことを知る・・・。
応募受付は終了しました。
© 2009 TWC Asian Film Fund, LLC. All rights reserved.
取材・文/安田佑子 撮影/徳田洋平 衣装協力:PAL ZILERI
PR