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9.11の同時多発テロで、少年オスカーは大好きな父を失った。母親には埋められない、心にぽっかりあいた穴。父親との思い出を忘れてしまうことが怖くてたまらない! そんなとき父のクローゼットから見つかった1本の鍵。その鍵穴を探すことでなにか答えが見つかるかもしれない・・・と、オスカーはNY中を歩き回り、さまざまな人と出会う。『リトル・ダンサー』のS・ダルドリー監督が、ふたたび少年と家族の絆を描く。父トーマスにトム・ハンクス、母リンダにはサンドラ・ブロック。困難をどう乗り越えれば前に進めるのだろう。生きることに怖がりで、理屈では言い表せない喪失感、悲しみをうまく解消できずにいるあなたへ・・・。3.11を経験した日本にも大切なメッセージをくれる1本。
11歳のオスカーは怖がりで、大きな音、エレベーター、電話のベル、高層ビル、電車、ブランコにも怯える。「怖い」と人に言えず、つい意地を張って悪態をつく。生きるのに不器用なオスカーは、一度は「アスペルガー症候群(高機能自閉症)」の検査も受けた。そんな彼を大きな心を包んでいたのが父のトーマスだった。無理強いせず、それができることでなにがメリットかを説明し、息子がその気になるまでいつまでも待った。敏感な少年、という難しい役を見事に演じたのが、演技経験は学芸会の寸劇だけだったというトーマス・ホーン。4カ国語を話す頭脳明晰な彼は、アメリカのクイズ番組で勝ち残って注目されオスカー役に抜擢された。
オスカーは自分だけの秘密の場所に「電話機」を隠している。そこにはワールドトレードセンターに閉じ込められた父親が留守番電話に入れたメッセージが保存されていた。母のリンダは夫からの電話を職場で受け、自分から電話を切ることができない。リンダを演じたサンドラ・ブロック(47)は、実際にあの日に「最期の会話」を交わした録音やメッセージを聴かせてもらったという。「私を打ちのめしたのは、自分が遺していく者をなんとか安心させようとする人々の言葉だった。ああいう言葉を聴いた心の痛みは決して消えることがないとわかったわ」。最愛の夫を失い、息子の傷を癒すこともできず、リンダは毎日を「停止」している・・・。
原作はジョナサン・サフラン・フォアの同名小説。大きな手のイラストにタイトルが書かれた表紙や、行間、写真の使い方など、ビジュアル的にも魅力的な世界的ベストセラー。小説ではオスカーは9歳。父親の遺品の中から出てきた鍵の封筒に「ブラック」という言葉が。オスカーは決めた。NYにいる「ブラックさん」全員(電話帳によると472人!)に会って鍵穴を探すことを。しかもオスカーは徒歩で探し回る。1件の滞在時間を計算し、夏休みの宿題さながら地図や訪ねる順番を分類した資料を手作りしたり、子供の想像力と知能は計り知れない。映画を見ていても、オスカーの頭の中にどんどん引き込まれていく!
橋、電車、エレベーター・・・少年オスカーには怖いものがたくさんあった。それでも父親のトーマスはオスカーの個性を生かしながら、少しずつ困難に立ち向かえるように接していた。オスカーは父親が大好きだった。向かいのアパートには祖母が住み、オスカーとはトランシーバーで常に連絡をとる。幸せだった。あの「最悪の日」に父親が命を落とすまでは。空っぽの棺を埋葬してから1年。オスカーは今も父の死を受け入れられずにいた。
© 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC
取材・文/安田佑子
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