電車のエンジン音を聞きわけ、シートやテーブルに魅了され、飛行機の方が速くても新幹線や在来線をあえて選ぶ。松ケンと瑛太がそんな“鉄道男子”を演じる和み系ムービーが完成。登場する電車の数は20路線80モデル、松ケン演じる“小町（こまち）”、瑛太演じる“小玉（こだま）”、そのほか“あずさ”、“いなほ”など登場キャラクターの名前がすべて特急の名前なのもユニーク。鉄男だって女の子に興味があるし、仕事もがんばりたい。そんな２人が鉄道を通して出会う恋と人生の縁とは？ 森田芳光監督の遺作となった今作は、監督が10数年前から温めていたアイデア。急行と各駅停車、それぞれによさがあるから、ときには急いで、ときにはゆっくり、人生の列車の旅を楽しもう！
鉄道に詳しくない女子でも、詳しい鉄子でも楽しめる今作は、「この列車はなんでしょう？」「私の名前はどんな列車でしょう？」などと映画まるごと１本が鉄道クイズのよう。冒頭で主人公の小町と小玉が出会う列車は「わたらせ渓谷鐵道」。大正３年に敷設され、国鉄足尾線、JR東日本足尾線を経て、平成元年から群馬県・桐生駅―栃木県・間藤駅間を走っている。映画の登場人物たちの名前になっている電車の走行区間まですべて解ったらあなたも立派な鉄子！ ちなみに“こまち”は秋田新幹線、“こだま”は東海道・山陽新幹線。小町に積極的にアタックするＯＬの“あずさ”は新宿―松本・南小谷間を結ぶ中央本線特急。
「趣味でつながっている人たちは、友達とはまた違う信頼関係があって、好きなものが共通する者同士の気遣いがある。小町と小玉も本当にいい距離感なんですよ」と話すのは、小町役の松山ケンイチ（27）。TVではNHKの大河ドラマで豪快な平清盛を演じる松ケンだが、この映画では、突然の九州転勤にも「九州の鉄道めぐりができる」と喜ぶ、ひょうひょうとした鉄男を演じている。森田監督との仕事については「僕らは結局監督の世界観の中で遊ばせてもらっただけ。監督はやはり“見ている”部分が全然違いますね。観る人は社会の今を、この映画でポジティブに気付かされていくんじゃないかと思います」とのこと。
映画『ワイルド７』ではクールで尖った秘密警察を演じた瑛太（29）が今作で演じるのは、温厚で親思い、仕事にも熱心な鉄道好きの小玉。笑顔の瑛太がたくさん見られるのもファンには嬉しい。松ケンとの共演については、「松山くんとは同じ趣味があるというわけでもないのですが、２人で黙って座っている待ち時間でもなんだか心地よくて、現場に行くというより、毎日松山くんに逢いに行く感じで撮影を楽しんでいました」と話す瑛太。自身も大の鉄道好きだった森田監督は、松ケン＆瑛太の絶妙なキャスティングについて、「２人とも真面目だから、この２人がひとつの趣味にのめりこめばとんでもない行動を起こすのではないかと思った」そう。
大企業ののぞみ地所に勤める小町圭は、電車の中で彼女にフラれたばかり。鉄工所の二代目、小玉健太は鉄工所の存続を握る新しい機械を買うための融資が下りずに悩んでいた。そんな２人の共通項は“無類の鉄道好き”。小町は、音楽を聴きながら車窓を流れる景色を見るのが好き。小玉は電車のエンジン音を聴きながら、内装をチェックするのが好き。２人は同じ電車に偶然２度乗りあわせてから友達に。小町は小玉の鉄工所の寮を借りて住むことに・・・。
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© 2012『僕達急行』製作委員会
取材・文／安田佑子
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