恋する歌舞伎

更新日:2017/10/17

恋人の本心を確かめたかっただけ。井戸に葬られた、皿と愛情

恋する歌舞伎:第27回『番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)』

第27回 恋する歌舞伎は、『番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)』に注目します! 日本の伝統芸能・歌舞伎。興味はあるけどちょっと難しそう・・・なんて思ってない? そんな歌舞伎の世界に触れてもらうこの連載。古典ながら現代にも通じるストーリーということを伝えるために、イラストは現代風に超訳してお届け。

【1】身分は違えど熱愛中の二人。気になるのは彼の縁談の話

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若き旗本・青山播磨(あおやまはりま)は花見の最中、以前から犬猿の仲である幡随長兵衛(ばんずいちょうべえ)の仲間に喧嘩をしかけられる。血気盛んな播磨は、売られた喧嘩は買わねばと一触即発の状態に。そこへ以前から甥の素行の悪さを気にかけていた伯母・真弓が仲裁に入ったため、その場はなんとか事なきを得る。真弓は甥がいつまでも落ち着かない状況をみて、「こうなるのも播磨がいい加減身を固めないからだ」と言い残し去っていく。実は播磨が伯母の勧める縁談を片端から断っているのは、お菊(きく)という恋人がいるためだ。お菊は播磨に仕える腰元で、お互いに深く愛し合っている。しかしお菊は、播磨の気持ちは信じてはいるものの、最近、播磨に縁談の話があるという噂を耳にしており気が気ではないのだった。

【2】彼の気持ちを確かめたい。そうだ、大事なお皿を割ってみよう!

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ところ変わって番町にある播磨の屋敷。今夜青山家では重要な宴会が行われるので、家宝として大事にしている高麗焼の皿を使うことになった。お菊は用人の柴田十太夫や他の腰元と一緒にお皿を検分している。その仕事の最中にも、播磨の縁談の話が話題となったので、お菊の心配はつのるばかり。「私のような身分違いの女は捨てられてしまうのかしら・・・」不安になったお菊は、この大事なお皿を割ったら恋人はどのような反応をするだろう。自分に対する気持ちを確かめたいと、家宝の皿をわざと割ってしまう!

【3】思いもよらぬ、優しさに溢れた恋人の神対応。しかしそれだけでは終わらない

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そこへ播磨が屋敷へ帰ってくるので、お菊はおずおずと大事な皿を割ってしまったことを打ち明ける。しかし播磨は全く怒りもせず、二人きりになったところで「お菊だから許したんだよ」と優しい言葉をかける。更にはお菊との将来を考えていて、お菊の母も屋敷で引き取った上で、結婚をしたいと告白する。播磨の愛情溢れる言葉を聞き、自分に対する愛情が真実であると確信し喜ぶお菊。

しかしここへ十太夫がやってきて「お菊が皿を柱に打ちつけ、わざと割っているのを、他の腰元が見ていたそうだ」と告げ口する。これを聞いた播磨は驚き、お菊に真実かと問いただす。

【4】裏切られた彼の怒りは収まらない。お皿と一緒に全てが粉々になっていく

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お菊は自分のあやまちを後悔しつつも、わざと皿を割ったことを認める。そして播磨の気持ちを確かめるために、皿を割り反応をみるという、あなたを試すようなことをしてしまったと明かす。真剣に愛していた恋人の、裏切りともとれるような行為を知り、怒りと悲しみが溢れてくる播磨。心をかき乱されながら「疑ったお前の気持ちは晴れても、疑われた俺の無念は晴れない」そう言うと、残りの皿をすべて割った上、愛するお菊を庭の井戸へ斬り捨ててしまう・・・! 最愛の恋人を失った播磨は、もう喧嘩に明け暮れるしか道はないと、飛び出していくのだった。

『番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)』とは

大正五(1916)年二月本郷座初演。岡本綺堂作。皿屋敷伝説(召使の女が大事な皿一枚を割ったために手討ちとなり井戸に捨てられ、その怨念から女の声が「一枚、二枚」と数えていき、十枚と言わずに泣き叫ぶという話)をもとに、江戸の旗本奴と町奴との抗争、身分違いでありながら愛し合う男女の物語を絡めて描いた作品。


(監修・文/関亜弓 イラスト/カマタミワ)

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