恋する歌舞伎

歌舞伎のキャラクター勢揃い!パーティーに乱入してきた兄弟とは一体!?

第41回 恋する歌舞伎は、『新春浅草歌舞伎』で上演予定の寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)に注目します! 

日本の伝統芸能・歌舞伎。興味はあるけどちょっと難しそう・・・なんて思ってない? そんな歌舞伎の世界に触れてもらうこの連載。古典ながら現代にも通じるストーリーということを伝えるために、イラストは現代風に超訳してお届け。

更新日:2018/12/28

恋する歌舞伎 第41回
『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』

寿曽我対面

【1】おめでたい正月に、何か起こりそうなセレモニーが始まる

源頼朝から厚い信頼を寄せられている工藤祐経(くどうすけつね)は、富士の裾野で行われる巻狩(※)の総奉行という職に任じられた。今日はそのお祝にと、祐経の館にたくさんの祝い客が集まっている。小林朝比奈(こばやしあさひな)をはじめとする大名や、美しい傾城(けいせい:格式のある遊女)たちも招かれなんとも華やかな雰囲気だ。やがて祐経が姿を現すと、皆、口々に祝辞を述べるのだった。そこへ、朝比奈が「祐経に対面させたい若者がいる」と、二人の若者を呼び出す。

(※)四方から狩り場を囲み、獲物を中に追い込んで捕らえる狩のこと

寿曽我対面

【2】華やかなパーティーをぶち壊しにきたのは、節度ある長男と血気盛んな次男坊!

若者は兄弟で、兄の曽我十郎祐成(そがじゅうろうすけなり)と、弟の曽我五郎時政(そがごろうときまさ)だった。穏やかで落ち着いた様子の兄・十郎とはうってかわって、弟・五郎は血気盛んで今にも祐経に飛びかかろうとしている。五郎がこんなにも興奮しているのは、二人の父・河津三郎が祐経に闇討ちをされたという遺恨があるからだ。めでたい席だからと、島台(祝儀の飾り物)を手にはしているものの、五郎は祝う気などさらさらない。祐経の態度に「堪忍袋の緒が切れた!」と、荒ぶる五郎を十郎は冷静に制している。

寿曽我対面

【3】怒りの感情が隠せない次男に助け舟。しかし相手のさらなる挑発にプッツンと切れてしまい・・・

その様子をみた大方の大名たちは、祐経の肩を持ち兄弟の無礼を咎める。そこへ朝比奈が助け舟を出し「正月なのでお年玉がわりに盃でも」と勧めるので、祐経は兄弟に盃を授けることにする。傾城の大磯の虎(実は十郎の恋人)は盃を、化粧坂の少将(けわいざかのしょうしょう:実は五郎の恋人)は酒を用意する。十郎は品良く飲むが、五郎は盃を受ける時も祐経に反抗的な態度をとる。更には「父を討たれて悔しいか」と聞かれ、感情がたかぶり、とうとう盃を乗せた台を素手でメリメリと壊してしまう始末。

寿曽我対面

【4】うまく事が運び、いよいよ敵討ち!ところが相手は一枚上手だった

五郎がどんなに血気にはやっていても、「紛失した友切丸がなければ敵討ちは叶わないだろう」と祐経は余裕の表情。友切丸とは、養父が頼朝から預かり、紛失してしまった源氏の重宝のこと。これを用意できなければ敵討ちはできないというのだ。
するとちょうど良いタイミングで兄弟の家臣がやって来て、刀を差し出す。祐経がその刀を検分すると、まさしく本物の友切丸だった。五郎は待っていたとばかりに討ちかかろうとするが、祐経が「時節を待て」というので、「卑怯者!」と言い放つ。祐経は「富士の巻狩りでの大事な職を任せられているので、それまで敵討ちは叶わない。役目を終えた暁には潔く討たれよう」というのだ。納得のいかない二人の元に「私からのお年玉だ」と祐経は何かを放る。開けてみると、それは狩り場の二枚の切手(通行手形)だった。祐経は本当に討たれる気でいるのだ。
「恨みを晴らせよ兄弟」と、どこまでも余裕たっぷりの祐経に五郎と十郎は再会を誓い合うのだった。

『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』とは

本作の元となっている「曽我物語」は中世前期に成立し、謡曲や浄瑠璃、歌舞伎の題材となった。歌舞伎では初春興行で「曽我十郎・五郎の兄弟が父の仇を討つ」という設定の演目を上演することが吉例となり、毎年新しい「曽我狂言」が誕生した。幕切では工藤を鶴、曽我兄弟と朝比奈を富士山、鬼王(兄弟の家臣)を亀に見立てた形できまり、めでたい雰囲気に包まれる。

2019年 『新春浅草歌舞伎』

監修・文/関亜弓
歌舞伎ライター・演者。大学在学中、学習院国劇部(歌舞伎研究会)にて実演をきっかけにライターをはじめ、現在はインタビューの聞き手や歌舞伎と他ジャンルとのクロスイベントなども行う。代表を務める「歌舞伎女子大学」では、現代演劇を通して歌舞伎の裾野を広げる活動をしている。

イラスト/カマタミワ

2019年 『新春浅草歌舞伎』はランチ付きでお得に予約

今をときめく若手俳優が総出演!『新春浅草歌舞伎』で福々しく華やかな 2019年の幕開けを

お正月の風物詩として親しまれ、大人気の『新春浅草歌舞伎』。注目の若手歌舞伎俳優が集結し、有名な演目の大役に挑む。2019年は、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助らが出演し、「寿曽我対面」「番町皿屋敷」など3演目を上演する。また、開幕前には「お年玉」と呼ばれる大好評の口上「年始のご挨拶」もあり、福々しくお祭り感がたっぷり。OZでは、『新春浅草歌舞伎』夜の部を「浅草ビューホテル」のお正月ランチ付きでお得にご用意。

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