恋する歌舞伎

更新日:2016/10/27

謎の病気でお嫁に行けない!トリックを解くアイテムは<毛抜>

恋する歌舞伎:第15回『歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)』

第15回 恋する歌舞伎は、『歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)』に注目します! 日本の伝統芸能・歌舞伎。興味はあるけどちょっと難しそう・・・なんて思ってない? そんな歌舞伎の世界に触れてもらうこの連載。古典ながら現代にも通じるストーリーということを伝えるために、イラストは現代風に超訳してお届け。

【1】まさに”ベール”に包まれた、姫の奇病とは!?

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小野家の息女・錦の前(にしきのまえ)は文屋豊秀との婚約が決まっている。しかしこの縁談、姫が病気になったという連絡が小野家よりあったために延期になり、その後音沙汰がない。訝しく思った文屋家は、粂寺弾正(くめでらだんじょう)という使者を小野家の館に送って、様子を伺うことにする。

小野家に着き、真相を探るため錦の前に直接お目にかかりたいと申し出る弾正。するとそこには頭からベールのようなものを被った、暗い面持ちの姫がいた。なんでも、患っているのは「薄衣を取ると姫の黒髪が逆立つ」という原因不明の奇病なのだそう。こんな状態ではとても縁談は進められないと、悩んでいるのだ。弾正は探偵よろしくトリックを暴くことになり、まずは館の主の到着を待つことにする。

【2】エロ探偵が発見したトリック解明の鍵は、なんと・・・

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待っている間、館で仕える美男美女たちに男女問わずちょっかいを出す弾正。煙草盆でもてなしにやってきた美青年・秀太郎には「馬術の稽古をしてやる」と馬乗りになろうとし、腰元・巻絹がお茶を運んでくると「君のお茶が飲みたい」など、かなりきわどいセクハラ発言を連発する。もちろん相手にされるはずもなく、あっさり振られ続けた弾正は、やれやれと毛抜で髭を抜き始めるが、何気なく使った毛抜を床に置くとびっくり! 

まるで誰かが操っているかのうように、ひとりでに立って動き出すのだ。この不思議な現象は、姫の奇病と関係があるのではと、推理を始める。

【3】捕らえた怪しい男の懐には、何者かに盗まれていた大事な短冊が

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と、そこへ万兵衞と名乗る怪しげな男がやってくる。この男の訴えによると
「妹をこの館の主人の息子に殺された。死んだ妹を返せ!」というのである。それを思いがけなく聞いた弾正は、万兵衞は自分の主人の領地で生きていることを知っている上に、本物の万兵衞から「大事な妹を殺されたので犯人を探してほしい」と相談されていたのだった。

弾正はすぐさま、嘘をついているニセの万兵衛を始末し、男の懐から短冊を見つける。この品物こそ、小野家が以前何者かに盗まれていた「ことわりや」の大事な短冊なのであった。

【4】姫の奇病のトリックも解明され、推理ゲームも終幕へ

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そこへ主の春道と錦の前が現れ、弾正の働きを称える。姫はというと、薄衣を取るとやはり黒髪が逆立つが、つけていた髪飾りを弾正が言った通りに取ってみると、あら不思議! 途端に髪が逆立つ奇病はおさまったのである。

このからくりは、髪飾りが磁石のようなもので引っ張られていたからだと説明し、こうなるためには「頭上で磁石を操作している奴がいるはずだ」と言い、槍で天井を突き刺す。すると推理通り、磁石を持った怪しい男が落ちてきたのだった! 髪飾りは鉄製だったため、天井から引き寄せられ、逆立っていたとわかる。黒幕の正体も暴き、事件も解決したことで安堵する一同。錦の前は、婚約者とめでたく結婚できることを喜ぶ。ちょっとスケベなところがたまに傷だが、観察力・推理力に長けた弾正は、皆に送られながらゆうゆうと退場するのであった。

『歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)』とは

七代目團十郎が制定した歌舞伎十八番の一つ。1742年(寛保2年)に『雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)』の三段目に当たる。

監修・文/関亜弓
歌舞伎ライター・演者。大学在学中、学習院国劇部(歌舞伎研究会)にて実演をきっかけにライターをはじめ、現在はインタビューの聞き手や歌舞伎と他ジャンルとのクロスイベントなども行う。代表を務める「歌舞伎女子大学」では、現代演劇を通して歌舞伎の裾野を広げる活動をしている。

イラスト/カマタミワ

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