恋する歌舞伎

見た目はアレでも一途な奥さま。もし旦那が浮気をしたと知ったら!?

第56回恋する歌舞伎は、「身替座禅(みがわりざぜん)」に注目します!

日本の伝統芸能・歌舞伎。興味はあるけどちょっと難しそう・・・なんて思ってない? そんな歌舞伎の世界に触れてもらうこの連載。古典ながら現代にも通じるストーリーということを伝えるために、イラストは現代風に超訳してお届け。

更新日:2020/03/16

恋する歌舞伎 第56回
「身替座禅(みがわりざぜん)」

「身替座禅(みがわりざぜん)」

【1】夫への愛が強過ぎて、束縛が過ぎる奥さん。しかし夫には愛人が!

都の大名である山蔭右京(やまかげうきょう)は、妻の玉の井(たまのい)が怖くて頭が上がらない。しかも玉の井は束縛が激しく、日頃右京のそばを片時も離れないでいる。それもこれも夫を一途に愛するがゆえなのだが、ある日右京は、何としてでも家を抜け出そうと決意し、方策を考えている。なぜなら右京には美濃国で出会った愛人がいて、その花子という女性が「都へ上るので逢いたい」という手紙を送ってきたからだ!
考えた末に、右京は玉の井を呼び寄せ「近頃夢見が悪いので、全国の寺社仏閣を詣でたい」と訴える。もちろん玉の井は聞き入れるそぶりもない。そこで右京は、「屋敷内の持仏堂に籠って七日七晩の座禅をしたい」と言ってみる。それも拒み続ける玉の井だが、夫の必死な様子をみて、遂に折れて許しを出すのだった。

「身替座禅(みがわりざぜん)」

【2】アリバイ作りもバッチリ。るんるん気分で抜け出したが・・・

もちろんこの隙に花子に会いにいくつもりの右京なのだが、念には念をと、持仏堂に、家来の太郎冠者を呼び出す。事情がのみこめていない太郎冠者に、右京は突然、衾(ふすま:昔の寝具で掛け布団のようなもの)を被れと命令する。つまりはこの持仏堂に自分の身替りを立てておき、何かあっても問題ないように仕立てたのだった。「絶対に衾を取ってはならぬ」と、太郎冠者に言いつけた右京は、上機嫌で屋敷を抜け出し花子の元へと向かう。
一方玉の井は、座禅中は女人禁制だから覗いてはいけないときつく言われていたが、一晩中夫が座禅をしているのが心配で、見舞いと称して持仏堂へやって来てしまう。

「身替座禅(みがわりざぜん)」

【3】心配して来たのに裏切られた!腹いせに仕込んだドッキリとは!?

侍女の千枝と小枝を引き連れ、お茶やお菓子を進める玉の井だが、衾を被った右京らしき人物は、必死に要らないと首を振るばかり。その様子をみて、右京から冷たい態度を取られたと思い込む玉の井。せめて顔だけでも見せて欲しいと言って、とうとう衾を取ってしまう・・・。すると夫ではなく、身替りに座禅をしているのは太郎冠者ではないか! 怒った玉の井は、太郎冠者を責めたて、ある作戦に協力させる。

「身替座禅(みがわりざぜん)」

【4】余韻に浸っていられたのもつかの間。甘い時間からお仕置きタイムへ!

何も知らぬ右京が、明け方になって上機嫌で帰宅する。花子との逢瀬を楽しみ、ほろ酔い気分だ。調子に乗った右京は、衾をかぶった太郎冠者のところへ近寄り、今日のできごとをのろけ始める。
実はこの衾を被って聞いているのは、奥方の玉の井。身替りの太郎冠者の、また身替りになっていたのだ。そんなこととは露知らず、花子との甘い時間の一部始終を語り終えた右京は、浮かれた様子で衾を取る。
予想だにしなかった、物凄い形相の妻・玉の井との対面に、慌てて取り繕うとする右京だが、もはや万事休す。大慌てで逃げ去る夫を、妻は追いかけるのだった。

「身替座禅(みがわりざぜん)」とは

明治43(1910)年3月市村座初演。岡村柿紅作詞。七世岸沢式佐、五世杵屋巳太郎作曲。狂言の「花子」が原作で、六代目菊五郎のために書いた狂言舞踊の一作目である。

監修・文/関亜弓
歌舞伎ライター・演者。大学在学中、学習院国劇部(歌舞伎研究会)にて実演をきっかけにライターをはじめ、現在はインタビューの聞き手や歌舞伎と他ジャンルとのクロスイベントなども行う。代表を務める「歌舞伎女子大学」では、現代演劇を通して歌舞伎の裾野を広げる活動をしている。

イラスト/カマタミワ

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