プロジェクトの原点 adidas「miCoach CONNECT」

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スポーツは、根性論や精神論からデータに基づく論理的な方法論へと確実にシフトしている。しかも、アスリートの世界だけではない。スポーツをするすべての人にデータを…。イノベーション精神に溢れる「miCoach CONNECT(マイコーチコネクト)」を取材した。

香川選手も活用

山下崇(アディダス ジャパン株式会社)
小学生のころからサッカーを始め、「アディダスの3本線に憧れていました」という山下。スポーツマンらしい熱い語り口が印象的だった。
「ブームだから、自分もランニングを始めた」「体重が気になるから、ダイエットのために走っている」といったように、近ごろスポーツに取り組む人が増えている。しかし、実際にやってみるとなかなか効果が出なかったり、やりすぎて失敗してしまったり、続かなかったりすることもあるだろう。

 そんな人たちにも活用でき、効率的で正しい運動をサポートしてくれるサービスが「miCoach(マイコーチ)」だ。ドイツに本社を置く世界的スポーツ用品メーカーのアディダスが提供しているサービスである。「miCoach」は運動のデータを“見える化"し、個々人に適切なトレーニング方法をコーチングしてくれる。スポーツを始めたばかりの人からアスリートまで幅広く活用でき、なんとあの香川真司選手も使用しているという。

 アディダス ジャパンで「miCoach」の責任者を務める山下崇はこう語る。

「私たちは常に、アディダス創業者であるアディ・ダスラーの『すべてはアスリートのために』という言葉を心に留めて製品づくりをしています。これまではアパレル・フットウェア・アクセサリーという3本柱でやってきたのですが、この3つではアスリートやスポーツに取り組む人たちをサポートするには不充分だと考えるようになりました。そこで、データを活用したサービスによってもサポートしていこうという主旨で、2010年から『miCoach』を提供し始めたんです」

スマホが実現した手軽な心拍トレーニング

(上)山下崇(アディダス ジャパン株式会社)(下)adidas「miCoach CONNECT」
「『miCoach』はすぐに儲かる効率のいいビジネスではありません。アディダスの生真面目さによって実現できていることかなと思います」
「miCoach」シリーズは心拍数モニター、ペーサー(音声によるコーチング機器)、ストライドセンサー(シューズにつけて走り方のデータを計測)、スピードセル(走行時間・距離・スピードなどを計測)といったデバイス類と、PCやスマートフォンで無料で使えるアプリケーション類からなる。
 その中でも「miCoach」の要になっているのが心拍数モニターだと山下は言う。心拍数モニターは、ランニング時にストラップで胸に取り付けることでユーザーの心拍数を計り、ペーサーへとデータを送る。ペーサーはその数値に応じて、音声でユーザーにペースアップ・ダウンなどのアドバイスを行う。これが基本的な仕組みだ。リアルタイムの音声コーチングは他社にはないユニークポイントでもある。

「心拍というと、トップアスリートだけが気にすべきデータだと思われるかもしれません。しかし、ダイエットや体力づくり、フルマラソンなど、人によって走る目的は違っても、心拍データを活用するのがもっとも効率がいいトレーニングなんです。心拍数は、体への負荷を客観的に表す数字。速く走ろうが、ゆっくり走ろうが、歩こうが、心拍数が同じなら体への負荷も同じです。ただ、たとえば腕時計型の心拍計などで心拍数が140と出た時に、その数字をどう活用すればいいのか一般の方にはなかなかわからないですよね。『miCoach』では、使う人の心拍を覚え込み、それぞれの人に適したトレーニングプランを提案します。ランニング、球技、ダイエット、筋力とパワーの向上など、プランは運動の目的に応じても変わります。そして、たとえばランニング中に心拍数が必要以上に高いときは『スローダウンします』と音声でコーチングします。こういった心拍数を活用したトレーニングを行うことで、最短距離で目的達成に近づくことができるんです」

 さらには、トレーニングのスケジュールも自動的に作成してくれたり、前日にはリマインドのメールを送ってくれたり、試合本番から逆算したトレーニングメニューも作ってくれたりもするという。もちろん、トレーニングのデータは蓄積され、成果はグラフなどで見ることができる。実に至れり尽くせりのサービスなのだ。

そして、昨年発売された「miCoach CONNECT」がさらに「miCoach」の利便性を上げた。
「miCoach CONNECT」をiPhone(もしくはiPod touch)に接続すると、心拍数モニターのデータがiPhoneに転送され、iPhoneを通じてモニタと音声でリアルタイムにコーチングを受けることが可能になる。これによって、心拍の活用がぐっと手軽になった。

「それまで男性ユーザーが9割以上だったんですが、『miCoach CONNECT』が発売されてから女性ユーザーが3割まで増えました。また、一時期はアディダスのオンラインショップで売り切れになるほどご支持をいただけました。『miCoach CONNECT』によって、明らかに流れが変わりましたね」
 iPhoneを活用することによる敷居の低さとファッション性、ダイエットへの有用性が女性を惹きつけたのだろう。
 デバイスを購入するのにはお金がかかるが、比較的安価で提供されており、コーチングなどのサービスは無料だ。この点も利用者の裾野が広がりつつある理由かもしれない。

有名トレーナーに「ライバル」と呼ばれ…

山下崇(アディダス ジャパン株式会社)
「『miCoach』で心拍を管理することは、中高年の方が安全に運動をする上でも役に立ちます。ぜひ一度お試しいただきたいですね」
手取り足取りコーチングしてくれる「miCoach CONNECT」は、ユーザーにとってまるでパーソナルトレーナーのような存在である。

「要は、スマートフォンがあなたのパーソナルトレーナーになる、ということなんです。アディダスの契約フィジカルトレーナーで、クルム伊達公子さんをはじめ様々なアスリートの指導経験のある中野ジェームズ修一さんも『僕らのライバルです』とおっしゃっていました(笑)」

 現状、「miCoach」には競合と言えるような製品が存在しない。しかし、山下もアディダスもそのポジションに安んじるつもりはない。

「こういったサービスは前例がなく、競合相手もいないからこそ、前代未聞のチャレンジができると思っています。それが楽しいですね。『miCoach CONNECT』は今後もまだまだ発展していかれるものだと思っています。私自身、もう少し遊び心を取り入れてもいいかなと考えています。たとえば、現在はコーチングの音声が男性・女性の2種類だけなんですが、それが香川真司選手や原辰徳監督、あるいは人気アイドルの声だったりするとモチベーションも上がりそうですよね(笑)。そういったアイデアはドイツの本社に提案していますので、いつか実現する日が来るかもしれません」

 現在はiPhoneとiPod touchだけに対応する「miCoach CONNECT」だが、山下は「来年以降、Androidなどすべてのスマートフォンで使えるようにしていきたいと考えています」と語った。

「ぜひ多忙なビジネスパーソンの方たちにも『miCoach CONNECT』を使っていただきたいですね。多忙だからこそ、限られた時間で無駄がない運動をすることが大切だと思うんです。ビジネスも体力が勝負。『miCoach CONNECT』で効率的に体力づくりをしていただければと思います」

 すべてはアスリートのために――いや、スポーツに取り組むあらゆる人々のために。「miCoach CONNECT」を核とする「miCoach」シリーズ はこれからも進化を続けていく。

※敬称略
  • 山下崇(アディダス ジャパン株式会社)
  • 山下崇
    アディダス ジャパン株式会社 スポーツパフォーマンス事業部 mi ビジネスユニット シニアマネージャー。41歳。1995年に株式会社デサントに入社し、アディダス営業本部に配属される。'98年のアディダス ジャパン起ち上げから同社に勤務。


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