プロジェクトの原点 あけぼの「牛カルビマヨネーズ」

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新商品が発売されては消えていく冷凍食品市場で、なんと約13年間も売れ続けている大ヒット商品がある。丸い粗挽き牛肉の中央にマヨネーズを乗せ、焼肉のタレをかけた『牛カルビマヨネーズ』である。止まらない人気の秘密を開発担当の山内満に聞いた。

父親世代にも大人気の一品

株式会社マルハニチロ食品 山内満
山内の入社は『牛カルビマヨネーズ』の発売後。ヒット商品の開発を引き継ぐプレッシャーと喜びを同時に感じているようだった。
 テレビCMを観ていても、スーパーの食品コーナーを眺めていても、目につくのは「ヘルシー」の文字。時代は健康志向だ。それはつまり、薄味であったり、野菜や魚を素材に使っていたりすることを意味する。
 ところが、ロングセラーを続ける冷凍食品『牛カルビマヨネーズ』は、品名のとおりに脂身のある牛カルビを使用し、焼肉のタレとマヨネーズで濃い味付けをした商品だ。  発売元であるマルハニチロ食品で商品開発を担当する山内満はこう語る。

「『牛カルビマヨネーズ』が発売されたのは2000年の春です。マルハニチロでは春と秋にそれぞれ10~12品の新商品を投入するんですが、その中で数年にわたって生産され続けるのは1品あればいいほう。『牛カルビマヨネーズ』は、ヘルシー志向と言われる市場で常識をくつがえし、約13年間も売れ続けているロングセラー商品なんです。マルハニチロの冷凍部門では現在でも売り上げナンバーワンですし、2012年の売り上げも2011年に比べて約25%伸びています」

 発売から10年以上経っているのに、いまだ売上増というのがすごい。山内によれば、一風変わった冷凍商品や味の濃い冷凍商品を作ることがマルハニチロ食品の特徴なのだという(もちろん、いわゆるヘルシーな商品も作っている)。  長引く不況の中で“お弁当男子"などという言葉も生まれたが、『牛カルビマヨネーズ』はランチボックスの中でアクセントになる一品として、男女を問わず幅広い世代から愛され続けている。

「お弁当はもちろん、内食回帰という流れの中で食卓に並ぶ料理の一つとしても食べていただけているのかなと思います。ここ数年で冷凍食品の簡便さや保存性のよさだけでなく、美味しさも認知されてきていることも、『牛カルビマヨネーズ』の売り上げが伸びている要因の一つだと思います」

BSE問題を乗り越えて大ヒット

(上)株式会社マルハニチロ食品 山内満 (下)牛カルビマヨネーズ
全体を丸く保ちながら中央をくぼませた形状を作ることや、マヨネーズが溶け出さないようにする点にも工夫があるという。
 とはいえ、『牛カルビマヨネーズ』は2000年の発売からずっと好調に売れ続けてきたわけではない。むしろ、発売から1年ほどで逆境に立たされた商品だった。

「発売直後は好評だったんですが、2001年にBSE(狂牛病)問題が発生して売り上げが下がり、以降はしばらく低空飛行が続いたんです。新商品も次々出てきますし、冷凍食品は限られた販売スペースでの“椅子取り合戦"なので大きなピンチでした。しかし、営業サイドを中心に『これは必ず売れる商品だから』と頑張り続けたおかげで、徐々に売り上げを回復することができました。私たちも想定していなかった、目に見えない“商品力"が『牛カルビマヨネーズ』に備わっていたのではないかと思います」

 転機になったのは、2006年だった。

「実は、この13年間で『牛カルビマヨネーズ』は味を毎年少しずつ改良しているんです。2006年には、過熱水蒸気焼き製法を取り入れました。300度のスチームで焼き上げるという当時は画期的な製法で、炭火で焼いたような風味やふっくらとしたジューシーな食感が味わえるようになるんです。この改良がきっかけになって売り上げが大きく伸び、現在までのロングセラーにつながりました」

 なお、2012年に行われた改良はタレの配合などであり、2013年にはマヨネーズの改良などが行われる。消費者からの要望を取り入れつつ、さらに質の高い商品を目指す工夫を続けているそうだ。これも『牛カルビマヨネーズ』がナンバーワンを維持し続けている要因の一つだろう。

真似はされても、真似するな

株式会社マルハニチロ食品 山内満
「意外にパンとも相性がいいので、ハンバーガーのように挟んで食べても美味しいですよ」と山内は新しい食べ方を提案してくれた。
 では、『牛カルビマヨネーズ』などユニークで消費者にも支持される冷凍食品は、どのようにして生み出されるのだろうか。

「すでに申し上げましたが、我々は半年で10~12品ほどの新商品を発売します。まず、商品開発を担当するスタッフ12名ほどが約3週間缶詰めになって会議をします。社内から寄せられた何百種類というアイデアを持ち寄り、会議の中で絞り込んでから、100品ほどを試食。最終的にその10分の1に絞り込むんです。それはもうカンカンガクガクの議論です(笑)」

 新商品の案出から決定までの作業はかなりきついものだろう。判断基準も美味しさ、コスト、消費者のニーズなど様々にあるはずだ。山内は、その中でも「これだけは決して曲げない」という判断の核があるという。

「ずっと開発を担ってきた先輩方から受け継がれた座右の銘があるんです。『真似はされても、真似するな』ということです。私自身、とてもいい言葉だと思っています」

 世の中が不況であればあるほど、企業は失敗を恐れ、売れている他社製品を模倣したり、対抗する製品を考えたりしてしまいがちだ。ところが、マルハニチロ食品には他社の模倣はするな、他社に模倣されるようなオリジナルの製品を創れ、という教えがあるというのだ。開発者にとって、これほどモチベーションが上がる言葉はないだろう。「やはり、仕事をしていてやりがいは感じますね」と山内も言う。
 こういったマルハニチロ食品の企業風土が原点となり、『牛カルビマヨネーズ』という大ヒット商品が生まれたのだ。

「餃子やハンバーグはすでに世の中にあるものですが、『牛カルビマヨネーズ』は私たちが製品化するまで世の中には存在しませんでした。消費者がまったく知らないものを発売するということには不安もありますが、だからこそ、どれだけその商品を私たち自身が信じられるかが大切だと思っています」

 一方、大ヒットを抱えるからこその悩みもあるという。

「これだけ偉大な商品があると、それを超えるものを作らなければ…という思いが常につきまといますね。私は、新商品のアイデアを考えるとき、スーパーやデパートの食品売り場を歩き回ります。そこにある素材や調味料、お惣菜などを眺めながら、うまく組み合わせられないかと考えるんです。ただし、冷凍食品売り場だけは行きません。どうしても他の商品を横目に見て、無意識に真似してしまう可能性があるからです」

 ときには、他社の新商品情報を知って「やられた!」「その方法があったか!」と思うこともあるという山内。しかし、超えるべき『牛カルビマヨネーズ』という偉大なハードルは目の前にある。
 その瞳の奥では、熱い開発者魂が燃えていた。
※敬称略
  • 株式会社マルハニチロ食品 山内満
    山内満
    株式会社マルハニチロ食品 市販用冷凍食品部 商品開発課(開発センター) 主任。34歳。北海道大学大学院水産科学研究科卒。2003年に新卒で株式会社ニチロ(当時)に入社し、石巻工場勤務などを経て2009年より現職。『ほうれん草とチーズのささみカツ』などを手がける。


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