VOICE OF CHEESE 日本のチーズ職人「百人百話」 Vol.15 四国エリア 日本チーズの“こえ”に出会う旅

今、着実に盛り上がりを見せている日本のナチュラルチーズ。国内の工房数は10年前の倍近くに増加し、国際コンクールで入賞を果たすチーズが続々と現れています。生乳を発酵・熟成させて作るナチュラルチーズは、自然の力と職人の製造技術のたまもの。そして何より作り手の想いが込められていることが、美味しさの必須条件です。チーズが生まれる現場から、作り手の“こえ”をお届けする本連載。

更新日:2020/02/20

VOICE 57 徳島県・鳴門市「チーズの灯(あかり)」清水亜希子さん

(画像左)「ナチュラルチーズのファンを地元・徳島にも増やしたい。食べやすい味わいのチーズが、その入口になれば本望です」/「チーズの灯」清水亜希子さん (画像右上)現在販売するチーズは、甘さやクリーミーさ、さっぱりしたフレッシュさを感じられるラインアップ (画像右下)ひとりで工房を切り盛りする清水さんだが、「共働学舎」時代の同僚など、全国の職人と交流を持つ 

徳島県内唯一のチーズ工房「チーズの灯」。製造から販売までを担うのは、地元出身の清水亜希子さんです。もの静かな印象の清水さんですが、独立までの経緯は意外にもドラマチック。動物好きが高じ大学で畜産を学んだ清水さん、卒業後は畜産関係の企業や動物病院で働き、10年以上チーズと無縁のキャリアを積んでいたそう。

運命が動いたのは、近所の図書館でのこと。ふと目に留まった本からある記憶がよみがえったと言います。「中学生の頃、岡山県『吉田牧場』のチーズ職人・吉田全作さんを取り上げたテレビ番組に感動したんです。本の著者は、まさにその吉田さん。チーズへの興味が再燃、職人を目指そうと決めました」

小柄ながら、行動力の塊のような清水さん。すぐに北海道の「共働学舎」の扉を叩き4年間修業、技術を取得し地元へ戻ります。独立にあたり、こだわったのが原料の生乳。「地元産の高品質なものを使いたい」と、酪農ヘルパーとして牧場で働き、牛の飼育方法に共感した徳島市の「ラックファーム」から仕入れることに。「冬に青草を育て牛に与えるなど、自給飼料に力を入れる牧場です。この時期は作ったチーズから草の香りがするんです」

現在揃うチーズは5種類。ミルク感たっぷりの「モッツァレラ」や、口の中でふわりと溶ける酵母タイプの「しらさぎ」など、どれも個性が際立つ正統派のチーズです。曰く「四国は“チーズの不毛地帯”。プロセスチーズは好きでも、ナチュラルチーズは食べないという人が多いので、クセがなく食べやすい味を心掛けています。特別な日ではなく日常的に楽しんでもらえたら」。通販はせず、地域の直売所やマルシェ、工房で販売するのも、地元への想いの表れ。清水さんのチーズは今、四国のチーズ界を導く小さな灯となっています。

(画像左)熟成中の「しらさぎ」。地元・吉野川の橋の名前を冠した (画像右上)奥から出してくれたのは、地酒を使った試作中のウォッシュチーズ。チーズ工房には初訪問という「オレキス」のシェフ・山田尚立さんも興味津々。他に地元産味噌に漬け込むチーズも企画中とか。「 初めて食べるチーズもあって、味わいの幅に驚きました」と山田さん (画像右下)ふわふわした食感のデザートチーズ「よしの」(右)453円(60g)、「しらさぎ」(左)907円(70g)

チーズの灯

TEL.080-4039-6723
住所/徳島県鳴門市撫養町木津623・5
SHOP/直売あり。その他、阿波市「JA夢市場」、徳島市「喜多野安心市」などで販売

VOICE 58 高知県・大豊町「農家民宿レーベン」渡辺則夫さん(左)・薫さん(右)

(画像左)「チーズは生活の一部。美味しさを通じ、牛と生きる農家の暮らしを体感してください」/「農家民宿レーベン」渡辺則夫さん(左)・薫さん(右) (画像右上)四国山地を望む牧場。春から秋は牛の放牧も行う (画像右下)搾乳用のジャージー牛は2頭。現在、牧場と工房の後継者も募集中 

豊かな自然に囲まれた標高800mの放牧地で、高知名産の肉用牛・土佐あかうしなどを飼育する渡辺さん夫妻。2010年から牧場横のログハウスで農家民宿を始め、自家製の肉や野菜を振舞っています。

スイスへの留学経験を持つ渡辺さんが、現地での思い出を元にチーズ作りを始めたのは今から10年ほど前。自家消費のミルクを搾るため飼い始めたジャージー牛の生乳で作ったチーズが、ファームステイで滞在中の外国人に好評で販売を決意。

本格的な製造施設と熟成庫を設置、県外の工房の職人と交流し指導を受けながら、精力的に生産に取り組んできました。「チーズを作るのは生活の一部。味噌や醤油と一緒です」と2人。真の“農家製チーズ”の素朴で優しい味わいが、多くの人に幸せをもたらしています。

(画像左)セミハードの他、モッツァレラとカチョカバロも製造 (画像右)「セミハードチーズ」1198円(100g)

農家民宿レーベン

TEL.090-1004-5611
住所/高知県長岡郡大豊町佐賀山キチヤ1253-3
SHOP/直売あり。その他、土佐町「道の駅 土佐さめうら」、高知市「JAファーマーズマーケットとさのさと」などで販売

VOICE 59 愛媛県・西予市「ほわいとファーム 千年の森工房」大森司さん

(画像左)「愛媛県随一の酪農地帯・野村町の生乳100%使用。熟成の変化も楽しめる伝統製法のチーズです」/「ほわいとファーム 千年の森工房」大森司さん (画像右上)本場同様、250gの大型タイプ (画像右下)モッツァレラは併設レストランの料理にも使われる

「愛媛県内で酪農と言えば、昔からここ野村」と語る大森司さん。自身も野村町の酪農家に生まれた大森さんは、県外で営業職に従事した後、29歳でUターン。地場の農業を支えるため設立された農業公園「ほわいとファーム」に就職し、チーズ職人へと転身しました。

北海道の工房で研修、前任のベテラン職人・鈴永寛さん(現在は北海道「あしょろチーズ工房」)に師事。製造を引き継いでからも、100%野村町産生乳を使ったチーズを作り続けます。

代名詞は、フランス・ノルマンディの伝統製法を用いたカマンベール「森のろまん」。ずっしり大ぶりで硬めながら、熟成が進むととろりと濃厚な口当たりに。「今後はチーズの種類も増やしたい」。職人然と語る大森さんの熱意が、本格的な味わいから伝わります。

(画像左)3週間に一度、50~60Lの生乳で仕込む「森のろまん」。昨年は「ANA」国際線の機内食にも採用 (画像右上・右下)「森のろまん」2138円(250g)

ほわいとファーム 千年の森工房

TEL.0894-72-3351
住所/愛媛県西予市野村町野村16-383-1
SHOP/直売あり

VOICE 60 愛媛県・内子市「醍醐」國分茂樹さん

(画像左)「ミルクの風味が生きた“山のチーズ”で国産ナチュラルチーズの門戸を広げます」/「醍醐」國分茂樹さん (画像右上)毎週200Lほどの生乳を仕込み、全4種のチーズを製造する (画像右下)切り立った斜面が牛の放牧地。県内で唯一、放牧酪農を行っている場所 

驚くような急斜面で悠々と青草を食む牛。國分茂樹さんが求める生乳は、そんな景色が広がるここ内子町にありました。

大手通信会社の研究者だった國分さんがチーズ作りを志したきっかけは、旅行先のイタリアでパルミジャーノの美味しさに衝撃を受けたこと。山間部の放牧牛の生乳から生まれる風味豊かな“山のチーズ”に憧れ、40代を目前に退職し北海道へ。道内の工房で研修後、チーズ製造に理解のある酪農家との出会いから内子町へ移住します。

工房を始めて8年目の現在、販路は首都圏にまで広がりました。目指すのは「きちんと“売れる”チーズ」と國分さん。一部の愛好家だけでなく、多くの人が「買いたい」と思える味を作ることが、日本のナチュラルチーズの未来に繋がると信じ、活動を続けます。

(画像左)調湿効果のある木を多用した熟成庫 (画像右)「モッツァレラチーズ」

醍醐

TEL.0893-44-3998
住所/愛媛県喜多郡内子町福岡乙130
SHOP/直売あり。その他、東京都・港区「ナチュラルハウス青山店」などで販売

【東京でも4人のチーズが買えます!】SHOP|清澄白河「チーズのこえ」

今回紹介した4つの工房のチーズを東京で購入するなら、日本で唯一の国産ナチュラルチーズ専門店「チーズのこえ」へ。チーズコンシェルジュが選んだ約40工房、年間300種類以上のチーズを取り揃えています。

TEL.03-5875-8023
住所/東京都江東区平野1-7-7 第一近藤ビル1F
営業時間/11:00~19:00
定休日/不定休

四国エリアのチーズを味わうイベント

共創料理 with オレキス

Metro min.編集部が独自にセレクトした名店と、日本各地のチーズの生産者とのコラボレーションによるイベント「共創料理」。第15弾は取材陣とともにチーズ工房を訪れたフランス料理店「オレキス」の山田尚立シェフが腕を振るいます。まずは「チーズの灯」の清水亜希子さんのお話をお聞きしながら、ウェルカムドリンクとチーズの食べ比べを。その後、山田シェフがそのチーズを使用して作る全5皿の特別コースが登場します。

場  所/オレキス(東京都港区白金2-3-3 カームコート白金高輪1F)
日  時/2020年3月15日(日)11:30~14:30(予定)
料  金/3000円(ウェルカムドリンク、チーズ食べ比べ、全5皿のコース)
募集人数/18名(抽選)※着席スタイル
応募締切/2020年2月27日(木)
※受付期間中であっても当選の連絡をする場合があります

メトロミニッツ「MADE IN TOKYO」特集

メトロミニッツ2020年3月号「MADE IN TOKYO」特集

東京は「都道府県魅力度ランキング」*では毎年上位にランクインする一方、「都道府県の愛着度ランキング2019」*は38位。例えば、自分が住む街は好きだけど、「東京」ともなると距離が遠くなる、とか。故郷は別にあり、仕事や学校の事情で住んでいる、とか。愛着が低めなことには様々な要因があると思いますが、東京を愛し、都市とつながって暮らす人が増えれば、東京に新たな魅力がプラスされるような気がしませんか? 今月は、東京の“ものづくり”が生まれる現場へ向かいました。
*ブランド総合研究所調べ

後援:独立行政法人 農畜産業振興機構「国産チーズ競争力強化支援対策事業」

Photo 松園多聞 Text 唐澤理恵
※メトロミニッツ2020年3月号「MADE IN TOKYO」特集の記事転載
※本ページで記載の価格は全て「チーズのこえ」の販売価格となります
※掲載店舗や商品などの情報は、取材時と変更になっている場合もございますので、ご了承ください

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