メトロミニッツ、東京、港区、森林浴

港区的自然セラピーのすすめ

更新日:2025/02/20

東京23区で最も起伏に富んだ地形で、樹林などの緑に加え、海をはじめとする水にも恵まれた港区。そうした緑と水の保全・創出・活用していく取り組みも進められていて、大都市ながら、自然にも優しい街でもあります。そんな港区なら、日常的な自然セラピーがかなうのでは? そこで、自然セラピーの研究を行う「千葉大学環境健康フィールド科学センター」を訪れ、お話を伺いました

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癒しの近道は身近な自然に
「好き」を見つけること

――――人は自然に癒されるということを当たり前のように受け入れていますが、人はなぜ、自然に癒しを感じるのでしょう。

「700万年前に誕生した人類は長い年月を自然環境下で過ごしてきました。そのため、私たちの体は『自然対応用』にできていると考えられています」と、自然セラピーの研究者・宮崎良文さん。現代へとつながる都市生活が始まったのは産業革命以降。

都市化が進んで便利になったものの、遺伝子は数百年では変化できないため、体は今も自然対応用のまま。人工的な環境に囲まれた私たちは、自覚はなくてもストレスを抱えていると言います。

「そのため、自然に触れるとストレスが緩和され、人のあるべき状態に近づき、生理的にリラックスします。またストレスによって低下していた免疫機能が改善。病気になりにくい体をつくる『予防医学的効果』が期待できます」。

そうした効果を解明すべく、緑地で自律神経、脳、免疫などの活動を測るなどして研究を重ねてきました。「緑地で過ごすと交感神経活動は低下し、副交感神経活動が高まってストレス状態が軽減。リラックスした状態になることが解明されています。

興味深いのは効果に個人差があったこと。例えば血圧。高血圧の人の数値が下がることは予想していましたが、低血圧の人は数値が上昇。どちらも正常値に近づいたのです。こうした結果から、自然には人それぞれをベストな状態へ導く『生体調整効果』があることもわかってきました」

メトロミニッツ、東京、港区、森林浴

心地よく過ごしながら体を整えられる自然セラピー。すぐにでも実践したいですが、大自然ではなく、都会の自然でも効果はあるでしょうか。

「山間に広がっているような大自然は魅力的ですが、都心で働いていたら、そうそう足を運べません。たまにしか行けない大自然ならば、小さくても身近な自然のほうがずっと効果的です。そうした日常的な自然の中から、心地よいと感じる、好みの自然や過ごし方を見つけてください」。

そんな好みを見つけるためのキーワードが『快適性』です。宮崎さんが定義する快適性とは『人と環境間とのリズムがシンクロナイズ(同調)した状態』。自然対応用にできている体が自然と接触すると無意識に一体化して、快適に感じるという考え。

この快適性は2通りあり、そのひとつが寒い日に暖かい室内へ入ると気持ちがよいと感じるような万人に共通する『受動的快適性』です。「もうひとつの快適性が『能動的快適性』。こちらが自然セラピーに重要で、五感を介したプラスαの快適を得ることをめざすため、個人の好みが大きなカギになります。人には『自然と勝手に一体化』するという本質がありますから、必ず好みの自然や過ごし方が見つかるはずです」。

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公園、庭園も豊富で、海もある港区。好きな自然と自分に合った快適を見つけてくつろぐ。日々のすきま時間にでもできる自然セラピーを始めてみませんか?

お話しをうかがった人

千葉大学環境健康フィールド科学センター

名誉教授・医学博士
宮崎良文さん
1954年生まれ。東京農工大学修士課程修了。東京医科歯科大学医学部助手、森林総合研究所生理活性チーム長を経て千葉大学へ。著書『Shinrin-Yoku: 心と体を癒す自然セラピー』(創元社) は世界18カ国で出版

テニュアトラック准教授
池井晴美さん
1990年生まれ。千葉大学大学院園芸学研究科博士前期課程修了後、森林総合研究所へ入所。現在は、千葉大学テニュアトラック准教授。『木材セラピー 木のやさしさを科学する』(創元社)は宮崎さんとの共編著

PHOTO/YUSUKE SHIRAI WRITING/MIE NAKAMURA
※メトロミニッツ2025年3月号より転載 

※記事は2025年2月20日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります