新しい野菜の裏にドラマあり! フルーツみたいな個性派野菜から、生産危機を救うべく現れた救世主、色が変わる!? 不思議野菜まで、日本の育種技術が生んだ注目品種について、育種家・品種ナビゲーターの竹下大学さんに教えてもらいました。ぜひ“推し品種”を見つけて、楽しく健やかなべジライフを。
CFプチぷよⅡ
一度食べたら忘れられない
直売所の大型ルーキー
つやつやの光沢とでこぼこした愛嬌ある見た目もさることながら、つまんだ時点でわかるぶよぶよ感に驚き! 噛んだ瞬間口の中ではじけるほど皮が薄く、まるで高級な種なしさくらんぼを食べているような新食感のミニトマト。従来とは一線を画す個性が、「グミみたい」「赤ちゃんのほっべのよう」と今年SNSでも話題となりました。
開発当初、皮の薄さゆえ収穫前に割れやすいこと、さらに配送時のちょっとした衝撃で割れるためスーパーでの取り扱いは難しいことが課題に。が、あえて商品化に踏み切ったところ、リビーターが続出! 今や直売所やマルシェで指名買いされるほどの人気を誇ります。3色のビタミンカラーが料理をにぎやかにしてくれそう。
CFプチぷよⅡ
育成地:宮城県
開発元:渡辺採種場
流通時期:ほぼ通年(6月~10月に多い)
まろあじ
まとめ買いもできちゃう
料理に大活躍の新顔かぼちゃ
近年よく見かけるひょうたん型のかぼちゃ·バターナッツ。大きいと保管場所に困る上、使い切るのに四苦八苦することも。
そんな悩みを解消すべく登場したのが、こちらの「まろあじ」。長さ約15cm、重さ1kgほどの使い切りサイズなのが嬉しい! バターナッツの特微であるナッツのような風味はそのままに、通常より肉質は粘質。維拌質をほとんど感じないから、スープにすればとろりとなめらか、グラタンなどのグリル料理にすればねっとりと美味。長期保存できるので、見かけたらまとめ買いもおすすめです。
暑さに強く、王の大きさのばらつきが少ないなど生産上のメリットもあるから、今後生産者が増え、市場で存在感を発揮しそう。今のうちにチェックすべレ。
まろあじ
育成地:静岡県
開発元:サカタのタネ
流通時期:7月上旬~11月末
べにひなた
明るい未来への祈りを託した
病気に抗う新品種
農業界隈で大きな問題となっているのがサツマイモ基腐病のまん延。2018年に国内で初めて確認されて以降、沖縄県と鹿児島県、宮崎県で甚大な被害をもたらし、全国的に危機感が高まっています。
「べにひなた」は、サツマイモの産地を守るために国が育成したサツマイモ基腐病抵抗性品種。一刻も早く苗の配布を実現させるべく、開発から製品化を異例の速さで乗り超えた期待の“救世主”です。
品種名には、ほくほくと優しい甘さから連想する“日なた”のイメージと、「サツマイモ関係者が明るく前向きになれるように」との切実な想いが込められたそう。全国の消費者の元へ届くのはまだ先ですが、国と育種家の執念が生んだ新品種の今後から目が離せません。
べにひなた
育成地:宮崎県
開発元:農研機構
流通時期:10月上旬~1月末
京くれないEX
サプリみたいに選びたい!
機能性成分豊富な進化系野菜
抗酸化作用に血圧やコレステロール値改善作用、さらには美肌効果まで期待できる成分·リコピン。トマトに豊富な印象がありますが、それ以上の含有量にもなるのがこの「京くれないEX」です。
ご先祖様は臭みが少ない京ニンジン(金時ニンジン)。“おいしい健康野菜”をテーマに開発され、食べやすさはそのまま、一般的に流通する西洋ニンジンにはほとんど含まれないリコピンがたっぷり! これからは健康や美容を気遣い、機能性成分に着目して野菜を選ぶ時代になるかも?
開発したのは、江戸時代に京に集まった野菜の採種から始まった老舗種苗会社·タキイ種苗。伝統野菜までをもアップデートし、新たな価値を生むメーカーの気概にもロマンを感じます。
京くれないEX
育成地:滋賀県
開発元:タキイ種苗
流通時期:12月中旬~1月下旬
スマイルボール
辛み成分の発生を抑えて
涙とさよなら、笑顔の食卓に
タマネギの唯一にして最大の欠点、それは目に沁みること。原因は、タマネギを切る際特定のアミノ酸と酵素が反応して発生する辛み成分だと突き止めたのが、長年レトルトカレーの原料であるタマネギを研究してきたハウス食品です。10年以上かけて開発したのが、辛みの原因の酵素が少ない「スマイルボール」。ハウス食品はこの研究で2013年の「イグ·ノーベル化学賞」を受賞しました。
目に沁みないから調理が快適、みじん切りも余裕。切った後の水さらしも不要で、スライスしてサラダに入れるのはもちろん、輪切りにして具を乗せるだけでほんのり甘い新感党の“タマネギカナッペ”に! 今期は生産量も拡大予定。おいしさの笑顔がますます広がります。
スマイルボール
育成地:北海道
開発元:ハウス食品
流通時期:10月中旬~1月末
藤くるり
映える料理ならおまかせ
食卓が華やぐビジュアル系大根
2006年、皮と果肉の両方が赤い大根として登場し話題をさらった「紅くるり」。その兄弟品種として登場した「藤くるり」は、名前通り紫色のリングがくっきり表れた断面が特徴です。まんべんなく色づく果肉の淡い紫色は、種苗メーカーの苦労の賜物。
見た目だけでなくおいしさもポイントで、シャキッと歯切れよく、優しい甘さが広がります。食感を活かすなら、生のまま薄切りにしてサラダに。加熱調理で甘さが際立つから、大根ステーキなど焼くのもおすすめ。
ちなみに美しい紫色はボリフェノールの一種·アントシアニンに由来。pHで色が変化するため、お酢を使うと鮮やかな赤色に変身!カラフルで技アリな野菜使いで、料理がぐんと楽しくなるはず。
藤くるり
育成地:愛知県
開発元:松永種苗
流通時期:7月下旬~2月下旬、4月末~6月中旬
監修/育種家・品種ナビゲーター 竹下大学さん
1965年、東京都生まれ。2004年、All-America Selections 主催の「プリーダーズカップ」初代受賞者に世界でただ一人選ばれた。著書に『日本の品種はすごい』(中央公論新社)、『野菜と果物 すごい品種図鑑』(エクスナレッジ)ほか
ILLUSTRATION/SHINJI ABE WRITING/RIE KARASAWA
※メトロミニッツ2025年10月号より転載






