メトロミニッツ,食堂,ごはん,きさらぎ亭,新桜町,東京

さぁ、食堂へ帰ろう~きさらぎ亭(桜新町)~

更新日:2026/08/20

ただおいしいからだけじゃない。食堂に足が向くのは、そこでしか味わえない人の温もりがあるからだ。体というより、心の栄養をもらう場所。東京の街に今も残る、“ただいま”が言いたくなる食堂、「きさらぎ亭」(桜新町)の物語を訪ねた。

創業49年。8年前に現店舗に店を移した。歴史を感じつつも磨き上げられた清潔な空間。コの字を細くしたようなカウンターは客との距離が近く、日々温かなやりとりがある

ペコペコのお腹を満たす
家のような団欒

注文を受けると、店主の横山あかねさんはてきぱきとフライを揚げ始めた。姿勢よく、きっぷがいい。以前は舞台役者をしていたと聞いて、合点がいった。「役者は飲食業に向いています。人を見て、空気を読む仕事だから」。こざっぱりした店内、厨房からは客の顔がよく見える。常連が来ると「今日はチキンカツかな」と先回りして準備をすることもあるという。「食べ方には、人柄が出ます。だからスタッフの面接ではいつも定食を食べてもらうんです。どんな子かわかるから」。

左/鶏むね肉で作る人気のチキンカツ。肉厚な歯応えと、軽快な歯触り。また食べたくなる 右/店主の横山さん(左)と社員の柴崎さん(右)。食べっぷりのよさで採用され、早8年が経った

幼い頃から見てきた両親の背中を追い、8年前に店を継いだ。ランチが終わればスタッフに店を託して帰宅し、家族に夕飯を作る。「店でも家でもお母さんをやってるようなものです」と笑った矢先、遅番の学生が出勤してきた。「お腹ペコペコでしょう。なににする?」すぐに厨房へ向かう。この場所で、これまで何人の空腹を満たしてきたのだろう。彼女が回す食堂には、家のような団欒があった。

きさらぎ亭

きさらぎてい
TEL.03-3426-1482  
住所/東京都世田谷区桜新町1-40-10 

Photo/MEGUMI SEKI Text/KAORUKO SEYA
※メトロミニッツ2026年9月号より転載

※記事は2026年8月20日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります