メトロミニッツ,食堂,ごはん,キッチンABC,大塚,東京

さぁ、食堂へ帰ろう~キッチンABC(大塚)~

更新日:2026/08/20

ただおいしいからだけじゃない。食堂に足が向くのは、そこでしか味わえない人の温もりがあるからだ。体というより、心の栄養をもらう場所。東京の街に今も残る、“ただいま”が言いたくなる食堂、「キッチンABC」(大塚)の物語を訪ねた。

左/名物ハーフ&ハーフ1,000円。店の2大名物、豚とニラの甘辛炒めがのった「オリエンタルライス」と「黒カレー」の合いがけは、見た目に反してくどくなくシャープな味わい。ボリュームはあるが、ぺろりといける 右/揚げ物や肉が次々調理されていくコンロも、オープン前にぴかぴかに磨きあげる

味以上を追い求める
洋食屋の静かな闘志

開店1時間前の店内は静かな戦場だった。客席を磨き上げるのはベテランのホールスタッフ。創業57年目の洋食屋とは思えない、清潔な空間には油のベタつきひとつない。厨房では3人のコックが黙々と手を動かす。店主・山下さんは定食に添える豚汁を仕込む。腰高ほどの大きな寸胴鍋に入れる野菜や肉を、できるだけ細かく切るのは「1杯の中に具がムラなく入るように」。都内に4店あるチェーンなれど、気遣いには店の色が出る。これだけ仕込んだ300杯が、1日で無くなる。

オープン間際「開けます」の声を合図にスタッフが揃いの黒いキャップを被る。店のユニフォームであるそれは、これから始まる1日に気合いを入れて締める黒帯のように見えた

「料理は段取りと掃除です」と山下さん。味とボリュームは大前提。その上でいかに早くできたてを提供するか。いつ来てもきれいな店を保つか。味以上を追求する静かな闘志が、人気の絶えない理由だろう。11時のオープンとともに続々と客が入り、あっという間に満席になる。むわんと熱気の立つ店内で、それでも段取りし尽くされた厨房は冷静に、熱々の皿を次々と生み出していった。

キッチンABC 南大塚店

キッチンエービーシー みなみおおつかてん
TEL.03-3947-9854 
住所/東京都豊島区南大塚2-36-1

Photo/MEGUMI SEKI Text/KAORUKO SEYA
※メトロミニッツ2026年9月号より転載

※記事は2026年8月20日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります