編集部の「いい1日」リポート VOL.014

編集部の「いい1日」リポート

この連載では、編集部員が見つけた「いい1日」のヒントをご紹介していきます。特集のためのリサーチから、個人的な趣味の散歩、その他もろもろ、よりみちで出会ったことや感じたことをつづります。アート好きな編集部員スドウは今回、横浜・みなとみらいで開催中の「ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス」を見に行ってきました。

更新日:2017/09/22

雨ニモ負ケズ、
3年に1度のアートの祭典へ

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横浜美術館の外壁と柱には、中国人アーティスト、アイ・ウェイウェイの作品が。難民が実際に着けていたライフジャケットを巻きつけた柱は、解決の糸口が見えない難民問題がテーマ。この救命胴衣、近くに寄ると少し海の匂いが。実際にこれを着て海を渡り、異国へ逃げ込んだ人がこんなにもいるのだと痛感します
アイ・ウェイウェイ(艾未未) 《安全な通行》 2016 《Reframe》 2016 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(横浜美術館) (C)Ai Weiwei Studio

こんにちは。不安定な天気が続いていますが、皆さん体調を崩したりしていませんか? 昼と夜で気温がまったく違ったりと、体調を崩しやすい時期だと思うので、みなさんお気を付けください。

台風接近中の3連休初日。朝に弱く、午後からゆるゆるとアートスポットへ向かうのが常な私ですが、今回は(私にしては)早起きをし、いそいそと電車に乗り横浜へ。3年ぶりの開催となる「ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス」へ行ってきました。

横浜トリエンナーレは、横浜美術館を中心に横浜赤レンガ倉庫、横浜市開港記念会館の3カ所で開催中の展覧会。トリエンナーレにあわせて周辺のアート施設でもさまざまなアートイベントや展覧会が行われ、盛り上がりをみせています。

便利すぎるアプリを使って
楽しくアート鑑賞

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フォトジェニック度NO.1なパオラ・ピヴィの作品。羽毛で作られたふわふわ&カラフルなポーラーベアたちは大人から子供まで大人気。会場内は、ほぼすべての作品が撮影OK!
パオラ・ピヴィ 《I and I(芸術のために立ち上がらねば)》―など 2014

館内に入ると、オタクカルチャーに影響を受けた「カワイイ」フィギュア作品や、東日本大震災をテーマに制作された詩的な絵画作品、本物の化石170個をつないで作った美しいネックレス、タクラマカン砂漠に電気を引いて砂漠の真ん中で冷えたビールを飲むというプロジェクトを記録した映像作品(!)など、個性的な作品が次々と出迎えてくれ、まったく飽きることがありません。

ふと目線を上げると、天井付近に作家自身の姿を模した人形がぶら下がっていたりと(しかも私たちを無表情で見下ろしていてちょっと怖い・・・)、予想のナナメ上を行く作品も多く、「現代アートってやっぱりおもしろい!」と思わずにはいられませんでした。

そして、横浜トリエンナーレを訪れて感動したこと。それは、無料アプリの作品解説がとてもわかりやすくて便利なんです。

ただ見ているだけではなにを表現しているのかわからなかった作品も、解説を聞いて「なるほど!」と納得したり感動したり。横浜トリエンナーレを訪れるときは、カメラとともに、スマートフォン用のイヤホンも必須ですよ。

横浜赤レンガ倉庫1号館会場にも
心躍る作品がたくさん!

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横浜赤レンガ倉庫1号館で鑑賞できる、クリスチャン・ヤンコフスキーの映像作品。重量挙げの選手たちが彫刻を持ち上げる様子を実況番組風に仕上げたユニークさにやられました
クリスチャン・ヤンコフスキー 《重量級の歴史》 2013 Photographer: Szymon RogynskiCourtesy: the artist, Lisson Gallery

大満足で横浜美術館を後にして、バスで横浜赤レンガ倉庫へ移動します。横浜トリエンナーレは各会場をつなぐ無料バスが出ているので、雨の日にはとても助かりました。晴れていれば会場間をのんびりおさんぽするのもおすすめです。

横浜赤レンガ倉庫のカフェで少し休憩していざ会場へ。結論から言うと、こちらの会場もとっても興味深い作品が目白押しでした!

福島の帰宅困難区域内に「誰も観ることができない作品」を設置・展示するプロジェクト「Don’t Follow the Wind」による、帰宅困難区域内の様子を体験できるVR作品や(初めてVRを体験しましたが、景色を360度見渡せるってすごい技術です)、驚くほど緻密で美しい刺繍作品があったりと、こちらの会場にもかなり骨太な作品が揃っています。

なかでも、クリスチャン・ヤンコフスキーの作品は、ポーランドの重量挙げ選手たちが、記念碑的な公共彫刻を持ち上げる様子をリポーターが全力で実況する映像作品。

「歴史の重み」を視覚的に表したテーマ性のある作品なのですが、まるで本物のスポーツ番組を見ているような構成が絶妙&シュールで、ついつい最後まで見続けてしまいました。横浜で撮影した彼の新作も考えさせられるコンセプトなのですが、思わず吹き出してしまう楽しい作品なのでそちらも要チェックです。

感じることと、きちんと理解すること、
どちらも大切にして

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今回いちばん心揺さぶられた作品。壁に突如現れる無限のトンネルです。思わず壁の裏に回って確認してしまうほど、どこまでも続いてるように見えるのです。物語性を感じる不思議な空間は、ずっと見ていられるほど素敵な作品でした
マーク・フスティニアーニ ≪トンネル≫ 2016

横浜トリエンナーレを通して、「現代アートっておもしろい!」と再認識した私でしたが、それはきっと、アプリの解説を聞いて各作品のコンセプトや伝えたいことを理解できたから。

私は今まで、たとえコンセプトを深く理解できなくても、作品を前にしたときに感情の揺れが起きたり、心を揺さぶられる衝動があれば、それはそれでいいんじゃないかと考えてきました。

ですが今回、作品の解説を聞いて「そういうことか~!」と理解できたときの喜びがとても大きくて、きちんと意味や意図を理解したうえでアートを鑑賞する大切さを改めて感じたのでした。アート特集をなんども作っておいて、今さらですが・・・。

だからといって、頭でっかちになりすぎて、理解しなければ!と焦ってしまうのもおもしろくない。

心で感じることと、頭で理解すること。

その両方をバランスよく持って鑑賞できれば、もっともっとアート鑑賞が楽しくなるのではないかな、と思いました。

今回も長々とお付き合いいただきありがとうございました。
みなさんもどうぞ、アートでいい1日を。

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※記事は2017年9月22日(金)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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