OZmallが贈る「クリスマスストーリー」第1話配信スタート!

クリスマスホテルストーリー

女性サイト「OZmall」が贈る、ホテルで繰り広げられるクリスマスストーリー。遠距離恋愛、幼なじみ、運命の出会い、逆プロポーズなど、クリスマスを前に、さまざまな男女に起こるホテルでの“4つのショートストーリー”をお届け。

更新日:2016/11/16

【第1話・前編】遠距離恋愛3年目。イヴに会う約束をしていた彼から突然「ゴメン」と連絡があり・・・

自分たちを「彦星と織姫みたいだ」なんて思うのは、少し自意識過剰かもしれない。
だけどそんなロマンティック思考が不可欠なほど耐え難い、遠距離恋愛3年目を過ごしている。


『・・・ほんとにゴメン。まさかイヴになるとは思ってなくて』


彼がずっと希望していた出張だ。行かないで、なんて言えるはずない。
それにもういい“オトナ”だから、そんなことしない。わたしは僅かな自尊心と思いやりを使って、絞りだすように言葉を紡いだ。


「大丈夫。ホテルには友達と泊まるね」


『ごめんね・・・年末年始は、きっと一緒にいられるから』

品川の夜景

東京~大阪という約550kmの距離にも負けず恋焦がれあう、わたしたちは離ればなれの恋人同士。
お互いの誕生日や記念日には、ホテルに泊まって贅沢な時間を共有するのが恒例の楽しみである。

新幹線で来る彼のことを考えて、今年のクリスマスイヴは品川駅から徒歩圏内の「東京マリオットホテル」を選んだ。遠距離恋愛を頑張ってきたふたりへのご褒美に、ちょっぴり背伸びして予約したのはエグゼクティブフロアのお部屋。専用ラウンジで乾杯してほろ酔い気分になったら、贅沢なお部屋をふたり占め・・・なんて、キザで甘い夜を期待していなかったと言ったら嘘になる。それでも外面を“オトナ”ぶったわたしは、適当なねぎらいの言葉をやっと吐き出してから電話を切った。


イヴ当日、この日のために買い揃えたワンピースと靴に視線を2往復ほどさせてそれらをクローゼットにしまい、一応はよそ行き用の黒いセットアップとヒールを身に付けてホテルへと向かう。

待ち合わせ場所のロビーに入ると、ジャスミンや白檀の甘さと爽やさが入り混じった上品な香りに包まれ、それだけでまずは嗅覚が、非日常にいざなわれてゆく。
ベーカリーでは、某TV番組で紹介されてから1日に何百本も売れるというカレーパンが、ちょうど焼き上がったようだった。
優しく曲線を描いたインテリアと差し色の紫がどこか和の雰囲気を漂わせるラウンジには、昼下がりのアフタヌーンティーを楽しむマダムが散見される。

なんと言っても今日はクリスマスイヴ。ここも夜になったら、カップルで溢れかえるんだろう。

程なく、いつもより少しだけ着飾った様子の親友が、パタパタと両腕の袖口を持て余しながらこちらへと向かってくる。

「独り身は人肌恋しいでしょ?キングサイズのベッドで寄り添って寝ようよ~」と、結局わたしは彼氏のいない親友にすがって来てもらったのだった。付き合いの長い親友はわたしの気持ちを察して、直前の誘いにもかかわらず快諾してくれた。

エグゼクティブフロアに泊まるゲスト専用のラウンジでチェックインを済ませると、早速部屋へと案内される。
黒いパンツに赤いジャケットというオリエンタルな制服をまとったベルガールが丁寧にドアを開け、わたしたちは部屋に足を踏み入れた。

エグゼクティブフロアのデラックスキングルーム



『素敵・・・!』 


思わず彼女が声を漏らす。
シンプルなインテリアと、随所に配置された現代アートのような家具が、部屋にユニセックスな雰囲気を漂わせていた。

ごゆっくりお寛ぎください。良いクリスマスイヴを。と、ベルガールがお辞儀をして部屋を後にする。


『これは、あの人と来たかったね』 


そう言って彼女はわたしの頭を撫でた。彼とは何回も会っているから、わたしたちの関係もよく知っている。
なんて男前な親友なんだろう。わたしの恋人は、この人なんじゃないだろうか?
彼女といることへの安心感がわたしを油断させて、大粒の涙が目からぼろぼろとこぼれた。

壁いっぱいの広い窓からは偶然にも、忙しなく右に左に過ぎてゆく新幹線や、空へと飛び立つ飛行機を眺めることができた。
あの新幹線が、あの飛行機が、いつも意地悪そうに笑って、わたしから彼を奪い去ってしまう。だけど憎みっぱなしではいられない。だって、彼をわたしの元に連れてきてくれることだってあるのだ・・・そもそも、乗り物に当たるなんて、おかしいけれど。
そんなことを考えていたら遠距離恋愛で感じてきた複雑な気持ちが入り乱れて、すぐに止まると思っていた涙もなかなか乾いてくれなくて、わたしはお気に入りのおもちゃを取り上げられた子供みたいに、しばらくわんわんと泣いてしまった。

不思議なもので、涙は悲しみを吸い取ってくれるかのごとく、それをひとしきり放出してしまうと妙な爽快感に包まれた。
このめったにないラグジュアリーホテルへのステイを大好きな親友と一緒に楽しもうという気持ちがむくむくと湧いてきて、わたしたちはエグゼクティブフロアの専用ラウンジへと足を運ぶ。

ずらりと並んだオードブルやスナックからいくつか選んでカクテルと一緒にテーブルに運べば、まるで某海外ドラマのワンシーン。


「寂しい独り身と、イヴに仕事を優先された可哀想なわたしに乾杯」


親友は『やだ、開き直っちゃった。わたしはまだ諦めてないからね』などと苦笑しながらも、わたしの掲げるグラスにチン、と自分のグラスをあてた。

カクテルを1杯飲むと、なんだか際限がなくなりそうだと顔を見合わせ、部屋に戻って飲み直す。ルームサービスでシャンパンを頼んで、本日2度目の乾杯をした。

~♪

酔いも回って学生時代の昔話に花を咲かせはじめたころ、突然親友のスマホからショートメールの着信らしき音が流れた。
彼女が画面を見て一瞬表情を変えたと同時に、今度は電話の着信音が鳴る。夢見がちな彼女が追いかけている、ボーイズグループの曲だ。わたしも幾度となく聴かされたから、なんとなく馴染みがあった。


『ごめん。電話・・・』


「イヴの夜に電話なんて、わたしの知らない間にどこかの誰かと新展開でもあった?」


アルコールで頬を赤らめながら茶化すわたしに向かって、申し訳程度に笑いかけると、彼女は部屋を出ていってしまった。

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まさかの“クリぼっち”!?一緒に過ごしてくれると思っていた友達が突然帰ってしまい・・・

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WRITING/RIO HOMMA(OZmall)

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